【51Base】です.
【パプアンパイソンの飼育・飼育環境】
美しいライトオリーブの体色と白い腹部のコントラストが美しい本種。
特定動物を除くボア・パイソンとしては
□ベーレンパイソン
□オリーブパイソン
□コースタルカーペットパイソン
などと並ぶ大型のパイソンで,その一番の特徴としてはその中でも最長であるということでしょうか.
■ベーレンパイソンパイソンの飼育
■オリーブパイソンの飼育
ヘビの大きさを比較するときにもちろん長さは非常に重要なのですが,同じ長さでも種によっては太さが全然違います。
同じ3mのパイソンであってもオリーブパイソンとアミメニシキヘビではその太さが段違いで,それ故に非常に締め付ける力は強く,オリーブパイソンよりも危険度は増します.
ですので本種も長さだけで言えば特定動物並みの大きさですが,成体でも大人の上腕ほどの太さにとどまりますので
「デカい」 ✕
「長い」 〇
といった表現の方が正しいようにも思えます.
(もちろんヘビを知らない方からすると上腕ほどの太さのへびなど恐怖以外の何物でもありませんが)
本種は今まで流通するほとんどがWC個体*で傷ついた体や色褪せた体色,潰れた吻部など,決してきれいな印象ではありませんでした.
ですが,ここ数年は海外からのCB個体も出回るようになり,その美しさは見るものを魅了することかと思います。
今回はそんな魅力的なパプアンパイソンについて,その生態と飼育についてまとめていきます。
【内容】
1.パプアンパイソンとは
■分類
■生息域
■大きさ・価格
2.飼育環境
■飼育ケージ
■温・湿度
■登り木
3.エサ
■幼体時
■成体時
4.慣れる?ハンドリング
5.まとめ
1.パプアンパイソンとは
■分類
爬虫網有鱗目ヘビ亜目ニシキヘビ科パプアニシキヘビ属に分類されるヘビ属
学名:Apodora papuana
英名:Papuan olive python,Papuan python
現在のところ亜種は確認されておらず,1属1種の珍しいニシキヘビです。
英名のoliveにあるように美しいオリーブ色の体色をしており,温度やヘビの感情,年齢によってもその濃淡が変化します。
オーストラリアのオリーブパイソンとは全くの別種で,体色もオリーブパイソンの方は濃いオリーブ色で,頭部も細く小さいので見分けは付きやすいと思います。
■オリーブパイソンの飼育
■生息域
ニューギニア島の西部から南部の沿岸沿いにそった熱帯雨林の広い範囲で生息が確認されています。
島の中央は東西に険しい山脈が連なっており,標高の高い場所での生息は確認されていないようです。
■大きさ・価格
平均全長:3.5m前後
最大全長:5m
全長5mとかまさに怪物ですね…
ただし,前項でも書きましたが太さがなく,全長を伸ばしきるといったこともないので,実際には思ったほど巨大には見えないかもしれません。
ですが,正直長いので扱いには憂慮することもあるかと思います。
とにかく長いので体に巻き付かれて思う様にケージに戻せなかったり,逆に長すぎてケージから出すのも一苦労…
そこまで激荒な生体は見たことはないですが,頭部は思った以上に大きいので咬傷には十分注意してください。
価格については販売ショップや時期などによっても上下しますが概ね10-20万円程度でしょうか。
生体 | 価格 |
WC個体 | ¥98000~¥150000 |
CBベビー | ¥150000~¥200000 |
CBアダルト | 不明 |
■価格が高価なヘビ8選
CB個体はここ数年で見かける様にはなりましたが,まだアダルトサイズは見たことがないので価格は気になるところです。
2.飼育環境
■飼育ケージ
幼体時から飼育する場合はプラケースや45cmケージ,もしくは衣装ケースでの飼育も十分可能です。
ですが,細くとも長いので同サイズのパイソンよりもよくエサを食べ,比較的成長は早いので恐らくすぐにでも90cm~120cmサイズのケージが必要になってきます。
いきなり120cmケージを準備するのも大変ですが,90cm水槽でしたら少し頑張れば準備できると思いますのでむしろ90cmケージからスタートしても良いかもしれませんね。
また,本種は非常に長いのですが体を伸ばしきることはなく,思っている以上に小さく感じるかもしれません。
■飼育ケージの選び方
90cmケージであれば1年は大丈夫で2年くらいは何とかいけるかと思います。
立体活動もしますし,全身を動かせられますので可能な限り高さのあるケージで流木などをレイアウトしてやると良いでしょう。
ただし,最終的には150-180cmクラスの自作ケージが必要となるでしょう。
上記以上のケージは必要。
■温・湿度
ニューギニアの西部から南部は標高の高い中央部と比較すると,高温多湿の熱帯雨林が広がっています。
本種の様なネシアンパイソンは乾燥に弱く,その場合,容易に感染症を呈してしまうこともあります。
ケージ内温度が低ければ消化不全を引き起こし消化器系の異常を呈しますので,必ずホットスポットは設けるようにしてください。
スポット | 温度・湿度 |
ホットスポット | 35℃~ |
ケージ内温度 | 30-31℃ |
ケージ内最低温度 | 28℃ |
夜間温度 | 26-28℃ |
湿度 | 70~80% |
全ての種に言えるのですが,必ず暖かい場所と涼しい場所を用意します。
特に夏期は室温が上昇すると,通気性が決して良いとは言えないケージ内の温度はどんどん上がってしまいオーバーヒートしてしまう可能性もあります。
爬虫類の暑さ対策も非常に重要なポイントかと思います。
■爬虫類の暑さ対策
湿度に関しては70%以上を基準とし,一日に数回霧吹き等で湿度を上げるようにしましょう。
例えばグリーンパイソンなどのように,そこまで湿度に関しては神経質になる必要はないかと思いますが,少なくとも冬期の乾燥には十分注意を払いましょう。
■爬虫類の冬対策 -湿度-
■登り木
本種は思った以上に立体活動も良くしますので,可能であれば入れてあげると様々な角度から本種を観察できるのでおススメです。
また,本種は非常に長いので,ある程度の活動量を維持するためにも立体活動は必要だと個人的には愚考しています。
ただ,注意としては登り木に巻き付いたヘビを取り出すのは非常に難渋する場合があります。
ましてや本種は特定を除けば恐らく最長のパイソンです。
太さもこの長さの生体にしては細いですし(といっても細めの成人男性の上腕ほどはある),ニシキヘビなので力もかなり強いです。
ほどいてもほどいても端から登り木に巻き付くことが容易に想像できるかと思います。
ある程度慣れればそこまで苦労はしませんが,荒い個体などは少し大変かも…
■登り木について
3.エサ
■幼体時
基本的にはサイズに応じたげっ歯類で問題ありません。
悪食家で,他のヘビもよく食べるようで,時折海外のブリーダーの方が,死産のボールパイソンなどを与えているのを見かけますが,一般家庭ではなかなか用意するのも難しいかと思います。
かといってその辺で死んでいる野生のヘビなどは絶対に与えないようにしてくださいね…
どんな寄生虫がいるかわかりませんので。
2mのパプアンパイソン。頭はまだ小さいけどアダルトラットL2匹食してびっくりした‼️ヘビの飼育はこの個体が初です。ワクワクすっぞ! pic.twitter.com/RBuxWuLb6N
— 革ベルト (@ppHOiDT8t3Z6UFs) May 24, 2022
幼体時は,カーペットパイソンの幼体より少し細いかほぼ同じくらいの太さですので,胴体より少し大きめのマウスを3-4日に1回のペースで与えます。
アダルトマウスLあたりが簡単に飲めるくらいになれば,ラットのSSサイズあたりに移行しても良いかもしれません.
私自身はオリーブやカーペットパイソンなど可能な限り早くラットへ移行しています。
飼い込みのサブアダルトほどの生体を購入して立ち上げる際に全くラットに反応せず,小さなアダルトマウスには飛び付くものも少なくありません.
大きくなる生体はいずれは「マウス→ラット」への移行も必須となりますので早い段階で餌付けておいても良いかと思います。
ラットに餌付いた生体はマウスでもラットでも食べてくれるようになるので比較的楽です。(ただ,小さいうちはラットの方が少し餌代がかかる)
■爬虫類の餌代について
■成体時
最大で5mほどにまで成長する本種ですが,飼育下では4m程のものは実際に見たことがあります。
意外と細いので4mと聞くと映画の世界の様ですが,想像以上に小さく感じるかと思います。
ただし,それでも成人男性の上腕部ほどの太さはありますので,やはり迫力はあります。
そして成体時のエサについても一癖あるものも少なくなく,ラットのLLサイズ以上を1匹では本種には足りないので2-3匹与えることもしばしば…
いっそのこと,冷凍ウサギやモルモット,ピッグなど与えたいところですが,体が細いのであまりに大きすぎるのも少し怖い気も…
ですが,実際には思った以上に大きなエサも簡単に呑むことができます。
例えばナミヘビ科で大型化するナンダやインディゴスネーク,パイソンではウォマやブラックヘッドパイソンは顎が小さい為,大型の獲物を一回というよりはある程度の大きさのものを数匹といった給餌をします。
■インディゴスネークの飼育について
■ブラックヘッドパイソンの飼育について
ですが,本種はさすがはパイソンと言いましょうか,細長さのわりに結構大きな獲物を呑めますので10~14日にラット3L~冷凍ウサギなど与えても良いでしょう.
ただし,大きい獲物は消化に多大なエネルギーを使いますので,生体の状態はしっかり把握しておきましょう。
■ヘビの吐き戻しについて
4.慣れる?ハンドリング
個人的に本種はWC個体も多く流通していますので,どちらかと言えば荒い印象を持っていますが,CB個体は比較的大人しいものが多いです。
参照:Wikipedia
もちろんベビーで,飼育ケージの中からバンバン飛んでくるものもいますが,持ってしまえばその手や顔を噛んでくるものは少ないかと思います。
ただ,これは個体差が大きいので必ずではありませんので注意してください。
成体サイズは可能かどうかではなく
「大変…」
特定動物のレティックなどは重くて大変なのですが,本種は長くてそこら中に絡まってくるので,尻尾に注意を向けているとあっという間に隙間に顔を突っ込まれて,そうこうしていると尻尾をアンカーにしてしまったり…
もちろん,慣れていれば丸め込んでハンドリングすることも可能ですが,そうでなかった私は大騒動だったことを今でも記憶しています…
また,多くのヘビに共通していることは,ある程度環境に慣れてくれば,ハンドリングは困難でもエサの準備をすれば近寄ってくるものが多いです。
これはボア・パイソンに多い傾向にあるかとは個人的には思っていますが,我が家も冬期の休眠に入っていない種ではそのほとんどが給餌の準備中はケージ前に集まっています.
そこがまた可愛いんですけどね…
掃除やハンドリングの際は必ず手袋着用をおすすめします。
5.まとめ
いかがでしたでしょうか.
【パプアンパイソンの飼育・飼育環境】
特定動物を除けば最大級の大きさ・長さを誇る本種ですが,ベビーから育てた生体は本当に美しく,オリーブパイソンよりもオリーブ色していると思うこともしばしば。
ただ,やはり大型化するニシキヘビですので,やはり飼育には覚悟が必要となってきます。
飼育設備だけでなくエサの確保や保温,乗り越えるべき壁は多々あります。
ですが,それを含めても素晴らしいヘビだと個人的には思っています。
■爬虫類の電気代
**生き物を飼育することの是非はここでは問いません.また,本記事は飼育を促進するためものではありません.
生き物を飼育することは命を預かることです.その生体を最後まで責任を持って飼育することが飼育者の義務です.飼えなくなったという理由で逃がしたりすることは絶対にやめましょう