【51Base】です.
【爬虫類の夏の暑さ対策】
変温動物である彼らに対して最も多くの対策がとられていることは寒さ対策だと思います.
ですがここ数年は真夏の猛暑が続いており,爬虫類の夏の暑さ対策が非常に重要な項目となりつつあります.
温度管理に関しては,夏も冬も基本的にはエアコン管理が最も安心かつ安全であろうかと思います.
ですが全ての飼育者がそういうわけにはいかないという現実もあるのではないでしょうか?
ですので今回はエアコンがどうしても準備できない時の暑さ対策について考えていきたいと思います.
【内容】
1.変温動物とは
■恒温動物と変温動物
・恒温動物
・変温動物
2.爬虫類の適正温度とは
■砂漠系
■熱帯雨林系
3.爬虫類の熱中症
4.夏の暑さ対策
■ファン(扇風機)
■サーキュレーター
■冷風機
■氷
■水容器
5.まとめ
目次
1.変温動物とは
■恒温動物と変温動物
・恒温動物
平均体温がほぼ一定に保つことができる動物です.身体周囲の気温の変化を受けず自身で体温維持・発熱が可能な体温調節機能が発達しています.
哺乳類や鳥類がこれにあたります.体温を常に一定に保つ必要があるためエネルギー消費量が高い.
・変温動物
周囲の気温に比例して体温が変化する動物.体温調節機能がないため,自身で体温を一定に保つことが出来ない.
逆に体温を外気と同程度でいるため消費エネルギー量は少ない.爬虫類・魚類・昆虫類などが挙げられます.
2.爬虫類の適正温度とは
■砂漠系
乾燥した地域に生息する生体たちの適正な体温は35℃前後と言われています.ですのでバスキングスポット直下は適正体温より少し高めの38℃程度は最低限でも必要です.
ですが,現地のバスキングスポットの温度は50℃以上に達しますので,飼育下でも同等の環境は提供するようにしてください.
ホットスポット直下の岩や石がジリジリ温められ,それによって生体の腹部も温めることが出来るようにすると良いです.真夏の昼にアスファルトの上に手を置くときに感じる,ジリジリとした暑さをイメージしてください.
逆に最低気温は20℃程度まで下げても大丈夫です.砂漠は熱が籠るような木々がありませんので,夜間はとても冷えます.
ですが夜間は地中や岩の間などで眠りますのである程度は温度・湿度が保たれている環境がシェルターとなります.
ですので飼育下でも20℃は下回らない方が無難だと思います.またアフリカ産の爬虫類は気温が下がると休眠状態になります.
繁殖や長寿にはエサを絞ることと同様にこの休眠も非常に大切な要素だと言われていますが,初めての飼育ではリスクも伴うので幼体時などは年中保温した方が良いかと愚考しています.
またヤモリなどの夜行性の爬虫類については25℃程度は欲しいところです.
■熱帯雨林系
熱帯雨林は温度と湿度も非常に高い環境です.こちらも同様に適正体温が35℃前後であると言われています.
それでもやはりバスキングスポットは40℃以上は必要です.
そうでないといつまでもバスキングし続ける必要がありますので…45℃程度はあっても問題ありません.
ですが夜間は砂漠系と違って熱帯雨林は熱が籠りやすく夜間も気温は下がりにくい特徴がありますので,最低でも25℃は下回らないようにしましょう.
また,爬虫類に限らず私たち哺乳類もですが,体温を上昇させることにより細菌感染などに対しての自己免疫力を活性化させることができます.
イグアナによる実験では,細菌感染させた生体を低温度で管理すると死亡率が上がったと報告されています.低温環境において生体の体温が24℃以下になった場合は,感染症に対する死亡率が高まることが分かっています.
逆に生体の体温が45℃を超えてくると蛋白質の凝固などが始まり死亡するリスクが一気に高くなりますので注意が必要です.
バスキングスポットが45℃程度あるとどうしてもケージ全体が暑くなってしまいますので,必然的に大きなケージが必要となってきます.
ケージ内の温度勾配が非常に重要な要素となります.
3.爬虫類の熱中症(熱射病)
爬虫類でも熱中症を起こすのか?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが,割と暑さで死なせてしまう飼育者は多いと思います.
寒さはじわじわと生体を苦しめますが,暑さはあっという間に生体を死に至らします.
爬虫類は汗腺がなく体温調節が出来ません.
ですので割と簡単に熱中症になってしまうと言われています.
特に注意したいのが春先から行うことがある日光浴です.
普段のケージとは違うケージに入れてから行うこともあるかと思いますが,日本でも直射日光下でのコンクリなどは50℃程度に簡単になります.
屋外で日光浴を行う際は必ず涼しい日陰とシェルター,そして水容器を準備するようにしましょう.
そして必ず飼育者の監視下で行いましょう.
思いもよらぬ脱走をされてしまうこともありますし,猫やカラスといった天敵に捕食されてしまうリスクすらあります.
特に脱走は近隣住民に迷惑をかけるだけでなくケガをさせてしまうなど,多大なリスクがありますので日光浴をさせる際には熱中症だけでなく脱走にも細心の注意を払ってください.
4.暑さ対策~エアコンなしの場合~
ようやくメインです.ここから先は以前私がエアコンがない環境で飼育していた生体達に行っていた方法です.
それを再度現生体達で再検討しています.
■ファン
これは現在でも行っている方法です.
ケージ側面や,上部網の上に置いても良いのですが,ケージ内に微細な振動が生じる場合はケージに直接接触させないようにしましょう.
特にヘビは振動には敏感ですのでストレスになってしまいます.
もちろん水槽用のファンもあります.
できれば静音タイプがいいですが、直接ケージに付けないのであれば割とパワーのあるUSBファンでも良いかもしれません.
*ケージに風を送り込むのではなくケージから吸い出すように設置してください.
■サーキュレーター
サーキュレーターは主に空気を循環させる為にケージ前方に設置して使用します.
冷気は下に向かうため上方へ送り出すことにより部屋全体の温度を低下させることも出来ます.
注意点は直接ケージに送風するのではなくケージ周辺の空気が循環するようにしましょう.
また,冬期などのエアコン管理ではケージ前などでなく,エアコン直下の壁方向に送風する方がより暖房効率は良いようです.
私も現在は爬虫類部屋に2つのサーキュレーターを使用し,1つはエアコン直下でもう1つは最も空気が冷える場所での結露防止の為に使用しています.
(写真では手前に置いています)
■冷風機
ある意味エアコンの次に最強かもしれませんね.
ただ割と高価な事と,電気代がかなりかかってしまう為,これで爬虫類ケージ周辺の温度を抑えるくらいなら,エアコンを導入した方が良いかもしれませんね.
ケージ作製の際などには重宝しています.
■氷(簡易クーラー)
まさに簡易クーラーです.以前はこの方法はかなり重宝しました.
ペットボトルや保冷剤を保冷バックや発泡スチロールに入れてその冷気を下方へ流すといった感じです.
保冷剤より500㎖のペットボトルを凍らせた方がよく持つのでよく使用していました.
簡易クーラー直下の気温は徐々に下がりケージ外気温にもよりますが,-5℃程度は確保出来ます.
ただ問題点は長期使用が困難なことと結露が生じる事.結露はタオルを一枚敷く事で防げますが何れにしても毎日氷は取り替えが必要です.
■水容器
ここも非常に大切なポイント.
水容器の水は生体にとっては生命線です.必ず毎日きれいな水に取り替えて下さい.
水に浸かるような生体では水容器に浸かることで暑さから逃れるものもいますので少し大きめの水容器を使用しても良いかと思います.
5.まとめ
いかがでしたでしょうか.
爬虫類の暑さ対策について自身の経験も踏まえてまとめました.
変温動物である彼らには寒さ対策に目がいきがちですが,ケージという限られた環境内では暑さのコントロールが効かず用意に命を落としてしまいかねません.
エアコン使用が最も効率的かつ安全ですが,様々な事情でそれが叶わない方についてはこれらの方法を試されるのも良いのではないでしょうか.
**生き物を飼育することの是非はここでは問いません.また,本記事は飼育を促進するためものではありません.
生き物を飼育することは命を預かることです.その生体を最後まで責任を持って飼育することが飼育者の義務です.飼えなくなったという理由で逃がしたりすることは絶対にやめましょう