【51Base】です.
【トカゲ・ヘビがエサを食べてくれない??】
~冬の拒食と原因について~
いよいよ冬本番の季節がやってきました.
この時期になるとSNS上でも
「エサを食べない」
そういった悩みをよく目にするかと思いますし,実際に悩まれている方も多いかと思います.
今回はそういった冬にエサを食べない種について,その考えられる原因と対策について一考し,まとめていきます.
*あくまで私個人の経験と知見,獣医師からのアドバイスや診断を包括的にまとめています.全ての生体で本記事の通りとはいかず,もしかしたら私たちもまだ知らない未知の病もあるかもしれません.それだけ爬虫類の医学はわかっていないことが多いことも事実です.
また,私は獣医師ではありませんので,あくまで経験則に沿ったお話しかできません.最終的な治療方針や原因については必ず獣医師の診察のもとで判断を仰いでください.
本記事が生体の拒食について,その悩みを少しでも解決できる糸口となれば幸いです.
【内容】
1.冬に拒食をする原因は??
■温・湿度管理
・トカゲの場合
・ヘビの場合
■ストレス
■病気が疑われる場合
・呼吸器系の疾患
・消化器系の疾患
・感染症,寄生虫
■季節性の拒食
2.対策は?
■飼育環境による場合
■病気と考えられる場合
■季節性のものと考えられる場合
3.まとめ
目次
1.冬に拒食をする原因は??
■温・湿度管理
・トカゲの場合
まず誰もが一番に考える原因が温度と湿度管理についてで,最も多くの方がここで躓いていることが多いです.
爬虫類は変温動物である事は既知の事実で,外気温にその生命活動を依存しています.
日本の冬期に爬虫類が活動するのは不可能で日本に生息しているもの爬虫類は全て冬眠します.
主に温度低下により食欲が落ちる原因として,夜間の温度低下とケージ全体の温度低下である場合が多いです.
ホットスポット周辺は30℃以上が保たれていても,ケージ全体の気温は25℃であったり,最低気温部が23℃程度であることも…
ポイントは
「ケージ全体の空間温度が何度か??」
できれば,監視カメラなどを導入して1日の動きをチェックしてみても良いと思います.
■爬虫類部屋にペット用のネットワークカメラを導入してみた
もしもずっとバスキングスポットから動かないといったことがあれば,それはバスキングスポットの温度不足が考えられます.
サーモガンなど使用して局所てきな温度をしっかりと把握しましょう.
バスキングスポットはアフリカ原産のものでは50℃近くまで,東南アジアや南米産のものも45~50℃程度はあっても良いです.
・ヘビの場合
ヘビの場合は非常に活動性が低下するものもいれば,夜間だけはウロウロしているものもいますので非常にわかりにくいです.
また,低温でもエサを食べるものもいるのが非常に厄介といえばそうなんですが,これはまた後述致します.
生息している環境によってはある程度の低温でも活動するものはいますし,暑すぎる環境の方がダメなものもいます.
ですが,休眠・冬眠をさせる目的がない場合は23℃以下にはしない方が良いです.
可能な限り最低温度は28℃は維持できるようにしましょう.
トカゲと同様に一部分だけ温かいのではダメなので空間温度をしっかり28℃以上に保つようにしましょう.
ただ,ヘビの場合は食思がなければ温度が高くても食べない場合もありますので,2-3回連続で食べない場合などは温度管理をもう一度見直してみるのも手かもしれません.
■ストレス
これは冬に限ったことではないのですが,ストレスで容易に拒食に陥ってしまうことはよくあります.
これはボールパイソンや野生採集個体(ワイルド個体)でよく見受けます.
人に触られることに慣れている生体であればそこまで問題にはなりませんが,飼育開始直後や荒く神経質なもの,ワイルド個体などではハンドリングを毎日行うことで強いストレス下に陥り拒食を起こしてしまうことも.
爬虫類は愛玩動物的な側面は少ないと個人的には考えています.ですので,あまりベタベタ触りすぎるのは注意が必要かもしれません.
購入直後や慣れていないものにハンドリングをしている状態で,エサも食べないといった際はしばらく触らずケージにも暗幕を掛けるなどして静かな環境でそっとしておいてあげましょう.
数日や数週間ハンドリングしなかったからと言ってそれから先ずっと慣れないということはありませんので環境に慣らしてあげることを最優先してください.
■病気が疑われる場合
・呼吸器系の疾患
**まず大前提として獣医師の診断を仰いでください.あくまで私の経験則での話が中心となります.
冬期は爬虫類など変温動物にとっては非常に辛い季節です.
現在日本に輸入されている爬虫類のほとんどは東南アジアや南米,アフリカ大陸に生息するものたちで,雨季と乾季に大きく分かれる気候に生息しています.
特に東南アジアの熱帯性気候に生息する種類は日本の冬場の冷気と乾燥に非常に弱いです.
局所的な温度上昇では空気中の温度が上がらず結果的に冷たい空気を吸い続ける,乾燥した空気を吸い続けることによって容易に肺炎を中心とした呼吸器系の疾患を患います.
肺炎は症状が出始めると小さな生体などでは命を落とすケースも多くあるようですので,日ごろから生体の様子はよく観察しておきましょう.
■ヘビの肺炎について
具体的には
・呼吸音が異常(ヒューヒューやブシューといった異常呼吸音)
・口が開いた状態で呼吸をしている(上を向いた状態が続く)
・エサを食べない
・動きが鈍い
また,痰が逆流して口腔から痰があふれてしまうことも…
トカゲであれば目を瞑りジッとしていることや,動く際も目が開かないといった症状もあります.
こういった場合は初めは食欲はあっても徐々に体力が削られ次第に拒食傾向に陥ることがありますので,早めに獣医師に相談されることをおすすめ致します.
肺炎はレントゲン画像で容易に診断が可能ですので,少しでも呼吸に違和感を覚えた場合はすぐに相談されても良いかと考えます.
*トカゲやヘビの肺は原始的で特に肺胞は荒く,哺乳類の様にはっきりとは映らないとも言われます
・消化器系の疾患
不適切な温度管理にて通常通りの給餌を行えば当然拒食することが多いのですが,中には低温状態でも関係なく食べるものもいます.
そういった生体は死の直前まで比較的元気なことが多いので突然死の可能性も十分あり得ます.
■爬虫類の突然死について
給餌後は必ず体の代謝を上げられるようにホットスポットの温度やケージ内の温度はこまめに確認した方が良いと思います.
特にヘビは獲物を丸呑みにしますので,低温状態では消化できずに消化管が壊死してしまったり,常在菌の繁殖等による消化管へのダメージが計り知れないので神経質なくらいに温度は確認してください.
また冬期はエサの無理なサイズアップはせずに,エサの頻度は少し落とすくらいの方が良いと経験的に考えています.
消化管の異常がある場合は糞や尿酸に異常所見が見られる場合もありますので,可能であれば写真を撮るなどして記録しておいても良いかと思います.
また,私は全生体の給餌日を記録するだけでなく排泄についても記録し,概ね何日で糞を出すかは把握しています.そういった記録があれば生体の異常も気づきやすいですし.
・感染症,寄生虫
寄生虫や口内の傷が化膿することによって生じるマウスロットなどがあり,先の項でも書きましたが免疫力の低下により常在菌が異常増殖することによる敗血症もあります.
線虫などの寄生虫は便検査で診断ができるので,診察の際には可能な限り新鮮な便を持っていきたいところです.
爬虫類に寄生すると言われる線虫は数百種類存在すると言われており,正直全ての線虫についてはわかりませんが,WC個体はかなりの高確率で保有していることがありますので,WC個体を購入した際は他の生体との接触は避け,使用した器具もしっかりと洗浄するようにしましょう.
化膿性の口内感染症も膿の除去と抗生剤,口内の消毒などが治療のメインとなりますが,飼育環境を清潔に保つ必要性がありますので,もう一度飼育環境の見直しをされてもよいかもしれません.
■季節性の拒食
アフリカ産,オーストラリア産,北米産などの爬虫類は冬眠ないし休眠をするものがほとんどで,有名なところですとボールパイソンなどは冬期に気温が少しでも下がるとエサを食べなくなるものもいます.
ある程度飼育に慣れた方で,休眠させずに一気に大きくしたい方などは気温の変化を付けずに飼育されていますが,飼育され始めた方などはどうしても秋口などにケージ内の気温が下がってしまうこともありますので,それが季節性の拒食のスイッチになったりもします.
これは多くのヘビに共通することで,概ね加温していたとしても食が落ちるものが多い印象です.
逆に食が落ちないものはしっかり温度を維持していないと消化不全から体調を崩してしまうものもいますので注意が必要です.
トカゲは季節性の拒食をするものは少なく,逆に与えすぎて短命に終わってしまうものも少なくありません.
サバンナモニターあたりがそうでしょうか…
■サバンナモニターのエサと脂肪について
いずれにしても爬虫類の飼育は少しエサは絞り気味くらいの方が良いと思いますので,季節性の拒食が疑われる場合は,焦らずに新鮮な水としっかり加温しておけばそのうち食べてくれる…くらいの気持ちで良いかと思います.
*定期的に体重測定は行った方が良いかと思います.急激な体重減少は何らかの器質的な原因がある可能性もあります.
2.対策は?
■飼育環境による場合
病気を疑わせる目立った症状がない場合は,まずは飼育環境をもう一度見直してみましょう.
具体的には
・ホットスポットの温度
・ケージ内温度
・クールスポットの温度
・湿度
・シェルターの有無
・水を飲めているか?
あくまで経験則ですが,相談を受けた多くの場合でホットスポット周囲の温度は良くてもケージ内の温度が25℃前後で結局ホットスポット周辺でしか活動していない,またはそこから動かないといったものが多い印象です.
また,東南アジアに生息する爬虫類は多湿の環境に生息しており,乾季であっても雨量は減りますが,湿度は60-70%程度はあるので,日本における冬期の保温では50%台,もしくは40%台にまで下がってしまうことも…
そういった場合は脱皮不全や脱水,呼吸器系への易感染性などが考えられますので,徐々に体調を崩すこともありますので湿度管理にも十分気を使ってください.
■爬虫類の冬対策~湿度管理~
もう一点,ハッチしたばかりの様なベビーのトカゲやカメレオン,樹上棲のトカゲなどは以外に脱水傾向にあるものも少なくありません.
流水やケージガラスに付着した水滴にのみ反応するものもいますので,水を飲んでいないかも??と思われたら水容器にエアーポンプを入れてみるのも1つの手かと思います.
飲んでいるのか実際に確認するには水槽に霧吹きで水滴を付けてみる,生体の口元に水を垂らしてみるなどして,その際に必死に水を飲むような仕草を見せれば恐らく飲めていないかもしれません.
ネットワークカメラなどを導入して1日の動きなどを観察してみると意外な盲点にも気が付く可能性もあります.
■爬虫類部屋にネットワークカメラを導入してみた
■病気と考えられる場合
上記で記載した症状が当てはまる場合や,餌を1週間以上食べない,飼育環境に問題はないと判断した場合,体重減少が著しい場合などはエキゾチックアニマル,爬虫類を診察してもらえる動物病院に速やかに受診をしましょう.
爬虫類の病気はまだまだわかっていないことも多く,投薬についても犬や猫,家畜用の物を用いることが多いです.
診察に際しては検便をした方が寄生虫などの可能性も探れますので可能な限り新鮮な便を持っていくようにしましょう.
個人的に今までに肺炎やサルモネラ菌症の生体を診てきましたが,改善にはかなり時間を要すものが多いです.
亡くしてしまった生体もいますし,この記事を書いている現在も同様の生体がいます.
肺炎は早期であれば数週間くらいで改善したものもいましたが,サルモネラ菌症などによる消化不全や吐き戻しなどはかなり長期間の治療を要し結果的に亡くしてしまったこともありますので,とにかく日々の観察が非常に重要です.
割と動物病院への受診を敬遠されてしまう方も多いと聞きますが,その多くは価格面への不安からとも伺っています(全ての方ではないとは思いますが)
初診でも,初診料やレントゲン,検便や薬代など合わせても1万円程で済むことが多いので,思ったよりも高額でないかと思います.
■季節性のものと考えられる場合
飼育環境も問題なく,病気も疑われない場合はそのほとんどは季節性のものだと思って良いかと思います.
アフリカ産,オーストラリア産,北米産だけでなく東南アジアのものでもパイソンなどはぱったりとエサを食べなくなるものもいます.
特定動物は経験がないのですがアミメニシキヘビなどがそうである場合が多いようです.
また,グリーンパイソンなどもその傾向があるものもいます.
■グリーンパイソンの飼育について
こういった場合は飼育者がその拒食に耐えられるかどうかだと個人的には考えています.
概ね2-3ヵ月の拒食程度であればヘビなら大きな問題にはなりませんし,トカゲでも休眠をする地域に生息しているものもなどは慌てる必要もないかと思います.
しっかりと温度を下げて眠らせるわけでなければ夜間の温度も下げないようにしっかりと温度管理をすれば自ずと食べるものがほとんどです.
■ボールパイソンがエサを食べない時に試したいこと
■ボールパイソンの拒食について
エサを食べないからとあの手この手で与えようと逆にストレスを与えてしまうと,逆効果ですし,休眠するような種に中途半端な加温とエサを与えると消化不全で亡くしてしまうリスクもありますので注意しましょう.
3.まとめ
いかがでしたでしょうか.
【トカゲ・ヘビがエサを食べない??】
~冬の拒食と原因・対策について~
この時期になるとこういった悩みを抱える飼育者の方が増えてきますが,その多くは思ったよりもシンプルな場合がほとんどです.
ただし,日々の管理を疎かにすると確実に生体の健康は蝕まれ,長期間に及ぶ治療や死なせてしまうことも.
爬虫類は飢餓には比較的強い種ですので焦らず,ストレスを与えないように飼育環境を再度検討してみましょう.
また,病気が疑われる場合は速やかに動物病院へ受診をしたいところですので,ぜひ一度近隣で爬虫類の診療に強い獣医さんを探されても良いかと思います.
**生き物を飼育することの是非はここでは問いません.また,本記事は飼育を促進するためものではありません.
生き物を飼育することは命を預かることです.その生体を最後まで責任を持って飼育することが飼育者の義務です.飼えなくなったという理由で逃がしたりすることは絶対にやめましょう