【51Base】です.
【ボールパイソン】
爬虫類飼育にて必ず名前が挙がるであろうボールパイソン.
その美しさやモルフの多さなど爬虫類飼育を始めたばかりの方やマニアの方まで多くのファンがいます.
そして本種は必ずと言っていいほど初心者におすすめのヘビ・爬虫類で紹介されます.
ですが,誰にでもお勧めできるかと言われれば決してそうではないとは思います.
それは
爬虫類飼育に慣れている方でしたらあまり気にならないかもしれませんが,初めて飼った生体がボールパイソンといった方でしたらとても心配になってしまいますね.
■ボールパイソンの飼育
ですので今回はボールパイソンの拒食について,なぜ拒食するのか,その対策は,拒食中の対応などわかりやすいようにまとめました.
1.拒食とは
【Anorexia】
食べ物を拒否する状態の事で,摂食障害とも言われています.
人間では精神・心理的な問題を背景とした疾患ですが,こと爬虫類に関しては生体のサイクルとして拒食をする種もいます.
基本的に爬虫類と私たち人間とでは代謝サイクルが異なり,1-2週間食べなくても全く問題なく特にヘビなどは半年間食事を摂らなくても大丈夫です(個体による).
以前,サバンナモニターの餌と脂肪についてまとめていますが,この際に脂肪体という特有の組織についても説明しています.
■サバンナモニターのエサと脂肪について
ですので拒食とは人間では栄養状態悪化による免疫力の低下など合併症のリスクがありますが
爬虫類のような変温動物は基礎エネルギー量が低く飢餓に対して抵抗がある種はそこまで慌てる必要はありません.
2.ボールパイソンの拒食
■正常の拒食
ボールパイソンが拒食する理由についてはまず彼らの生態を知る必要があります.
【生息地】
セネガルやギニアなど西アフリカ中央部を中心に生息しており,乾燥した草原・サバンナ・森林地帯に生息しています.
基本的には巣穴でジッとしていることが多く,あまり活動的ではありません.
また生息地は乾季と雨季に分けられ,乾季は最低気温が低いところでは20℃を下回り昼夜の寒暖差が非常に大きいことが特徴です.
【セネガル】
最高気温:雨季 31℃
乾季 27℃
最低気温:雨季 25℃
乾季 17℃
乾季は食料が枯渇しやすく,活動する夜間に体温を維持しにくいことから乾季には活動量が急激に減少します.
巣穴に入りほとんど活動しなくなり,この時期を休眠期と言います.
この休眠期にはそもそもエサを食べることがなく,体内の脂肪で生き抜くことができます.
最近はCB化が進んでおり,野生下の環境を再現する事は疑問ではありますが,少なくとも繁殖に関してはクーリングが必要ですので知識として休眠については持っておいても良いと思います.
■飼育初期の拒食
飼育開始して間もない時期に拒食をする個体は少なくありません.特にFH*などではわりと多い印象です.
*FH:ファームハッチ.現地採集の妊娠した生体の卵から産まれた生体.
飼い初めに拒食を起こす原因で最も考えられるのが
・環境の変化によるストレス
・飼育環境が悪い
・エサの温度が低い(高すぎも良くない)
ストレスについては本種は非常に臆病な性格をしています.
■ヘビの購入後にすること
Youtubeなどで触れ合ったり動物園などでもボールパイソンを触ったりするイベントがありますが,あれらは環境に慣れておりその時だけ我慢しているに過ぎません.
触ってもらって喜ぶ爬虫類は基本的にはいないと思ってください.
(特にヘビ)
彼らは触られことを我慢しているだけです.
ですので,飼い初めのボールパイソンで注意したいことはとにかく
「触らないこと」
時折SNSなどで丸まって怯えているボールパイソンを持って「エサを食べないんです」と悲痛な叫びを投稿している方がいますが,原因はその行為であると思ってください.
丸まっている姿は可愛いと思いますが恐怖に怯えて必死で身を守っている姿だと認識してください.
そして飼育環境では必ずシェルターを設けること.
温度はケージ内を30℃程度にし,シェルター内は27℃くらいになるようにします.
パネルヒーターの下にシェルターを置くことは控えた方がいいと思います.
(暑すぎてオーバーヒートを起こして命を落とす生体も多い)
■爬虫類の温度管理と保温器具
そしてエサの温度も手で触って人肌程度に温まった状態で与えるようにしましょう.
時々冷凍のまま与えるといったショッキングな話を聞いたことがありますが消化不全を起こしますので非常にハイリスクです.
■マウスの解凍方法について
*ボールパイソンの飼育にパネルヒーターは必須です.
*ケージ内の温度上昇をコントロールするため,サーモスタットは必ず使用しましょう.
*温度管理は湿度も含めて厳密に行うことをおすすめします.
■対策
拒食をする生体についてはまずそれが正常な拒食なのかどうかを判断する必要があります.
・最近までエサは食べていたか?
・はき戻しなどしていないか?
・飼育環境が急激に変化していないか?
・外気温が下がり,ケージ内の温度も下がってきたか?
などが挙げられます.最近までエサを食べていて気温が下がってきて,急に食べなくなったのであれば特に心配する必要はありません.
はき戻しや飼育環境の変化による拒食はしばらくシェルター内で落ち着かせてあげてください.
はき戻しは非常にエネルギーを消費しますし,胃酸の逆流などで食道内も傷ついていることもあるので,すぐに給餌することは控えます.
それはエサを探しているサインでもありますので,その時に給餌を行いましょう.
給餌の際も鼻先にエサを当てたり,急激に動かしたりなど,生体が驚くようなことはやめた方がいいです.そっと顔の前に出すか,置き餌でも構いません.
*強制給餌は最後の手段でもありますし,リスクが高いのでここでの記載は控えさせていただきます.
■ヘビの吐き戻しについて
■拒食中の対応
正常な拒食でない場合に取るべき行動は極端に言ってしまえば何もしません.以下の3点だけ確認してください.
・ケージ内温度は適正か?
・シェルター内の温度は暑すぎないか?
・リビングなど常に人がいる環境に置いていないか?
ヘビは非常に振動に対して敏感です.
リビングなど人の通りが多い場所や例えば子供などが飛び跳ねたり,掃除機の振動など,非常に敏感に反応します.静かで暗い場所でそっとしておいてあげましょう.
■ボールパイソンがエサを食べない時に試したいこと
彼らは哺乳類と違い非常にエコな生き物です.
体温が低く基礎消費エネルギー量が非常に少ないため,過度に焦る必要はありません.
3.まとめ
いかがでしたでしょうか.
【ボールパイソンの拒食について】
ボールパイソンの拒食についてまとめました.
飼い始めなどまだわからないことが多い中,エサを食べないと心配になってしまいますね.
ですがもう一度飼育環境を見直し,ストレスを除去し,落ち着ける環境を提供してあげること,彼らのことを知ることが非常に大切なことでもあります.
その拒食が正常な反応なのか異常な反応なのかよく観察し,焦らず腰を据えて見守ることも大切です.
マニアから初めての方まで幅広い層に愛されています
**生き物を飼育することの是非はここでは問いません.また,本記事は飼育を促進するためものではありません.
生き物を飼育することは命を預かることです.その生体を最後まで責任を持って飼育することが飼育者の義務です.飼えなくなったという理由で逃がしたりすることは絶対にやめましょう