【51Base】です.
【サバンナモニター】
今回は以前の記事でも少し触れましたが,サバンナモニターのエサについて少し掘り下げてまとめていきたいと思います.
サバンナモニターは安価で爬虫類ショップのみならず一般的な総合ペットショップでも見かけるようになり,飼育者の多いモニターだと思います.
ですが,多くの個体で肥満や短命になってしまうことが危惧され,アメリカでは現地の卵を人工的にふ化させたいわゆる FH個体の約90%は1年以内に死んでいるといったショッキングな話を聞いたこともあります.
(これは少し誇張されている気もします)
ですので,今回はエサについてサバンナモニターの生態と照らし合わせながら考察していきたいと思います.
【目次】
1.サバンナモニターの脂肪について
■脂肪体
■脂質の役割
2.給餌内容~頻度や内容~
■幼体期ベビー~ヤング
■亜成体~成体
3.休眠について
■生後から休眠まで
4.休眠期のエサ
■野生下
■飼育下
5.まとめ
目次
1.サバンナモニターの脂肪について
■脂肪体
サバンナモニターは脂肪体と呼ばれる器官を2つ,腹腔内に持っています.
脂肪体(Fat body): 脂肪体とは独立して腹腔内にある脂肪組織でいわゆる脂肪の貯蔵器官をさす.私たち哺乳類や鳥類は皮下組織にも脂肪体は蓄積されるが,爬虫類などは腎臓や生殖腺に接した腹腔内に蓄積される.
野生下で捕獲されたサバンナモニターの脂肪蓄積量は雨季の時期で15~20%ほどです.これが乾季の休眠期には1%以下まで低下すると言われています.
■サバンナモニターの飼育についてはこちら
脂肪というと肥満などの原因となり一般的には悪いイメージがありますが,脂質はとても重要な栄養素の一つです.
■脂質の役割
脂質は生体の主要なエネルギー源であり
タンパク質・脂質・炭水化物 = 三大栄養素
と言われ,さらに脂質は生体膜の疎水性構造を形成します.
難しい言い方ですが簡単に言うと身体はミクロには細胞から構成されています.
その体中の細胞を隔てる細胞膜は脂質から出来ているのです。つまり身体の構成上脂質は非常に重要な役割を持っています.
脂質は生合成と酸化により(脂肪酸)エネルギーの貯蔵と供給に使われます.脂肪は少ない量で多くのエネルギーを産出することができるため,生体維持には非常に重要です.
また糖などは基本的に貯蔵できず,飢餓に陥ると肝臓に貯蔵されている糖は1日と持たずに枯渇してしまいます.
爬虫類のように常にエサを摂取することができない生物は脂肪体を多く持ち,エネルギー消費量を最大限減らし長期間の絶食にも耐えうるようにできています.
またサバンナモニターは他のモニターよりも脂肪の蓄積が早いと言われています.
おそらく厳しい環境に適応した結果だと思われますが,およそ1カ月程で必要な脂肪蓄積量に達することがわかっています.
(必要な脂肪蓄積量は正確にはわかりませんが,捕獲された生体の対脂肪%は15~20%ほどみたいですので,おそらくはこのあたりが生体にとって必要な脂肪量なのかもしれません)
2.給餌内容
■幼体~ベビー
日本では春先にFHのベビーが大量に輸入されてきます.
ベビーは最初の半年間ほどで乾季に備えて非常に貪欲な食欲を見せてくれます.
これは乾季は食料が枯渇する為,それまでに身体の脂肪体に脂肪を蓄積させるためです.
ですので本種はベビーで購入して最初の1年でかなり急速に成長するはずです.
アフリカの大地では最小のモニターであり,常に猛禽類や大型の他の爬虫類,哺乳類など天敵の危険に晒されているはずです.
その中で彼らが摂取できるエサとしてはほとんどが昆虫類であることは容易に想像がつくかと思われます.
野生下では日中エサを求めて歩き回っていると思いますので,本種は飼育下でも比較的よく動きます.
可能であれば毎日,もしくは1日おきにコオロギを中心とした昆虫類を与え,時折鳥のささみなど脂肪が少ない肉類もカルシウム剤を添付して与えてください.
運動量は飼育下では不足してしまうためげっ歯類などは2週~3週に1回程度もしくは与えなくても良いと思います.
■亜成体~成体
80cm超えてくると体格的にもかなりどっしりとした体型であるため,迫力がでてくるかと思います.
亜成体まで成長するとおそらく慢性的な運動不足が懸念されますので,エサの量については注意が必要かと思います.
また幼体期のように成長著しいときはエネルギー消費も著明ですが,成長が鈍化してくると非常に肥満しやすくなります.
引き続き昆虫を中心とし,鳥のハツやレバー,ささみなどにカルシウム剤を添付して与え,ごくごく稀にげっ歯類を与える程度にとどめましょう.
もしくは与えなくても良いかもしれません.
またエサの頻度も5日に1回か1週間に1回ほどとし,生体の肥満に注意します.
モニターは活動する際にうまく呼吸が出来ず糖新生を利用した活動を行うと言われており,運動量だけでは簡単に脂質を下げることは困難だと思われます.
そのため,常にエサに気を付けながら飼育することが最良の方法かと愚考しています.
与える量を急激に減らしたりするとむしろ脂質は蓄積される傾向にあるので,少量の餌を毎日といった方法でも良いのかもしれませんが,いずれにしてもエサの頻度・質に関しては多少雑な方がむしろいいのかもしれませんね.
魚やエビ類などもよく食べるため,時々そういったメニューを追加してみるとおもしろいかもしれませんね.
ただ野生下ではほとんど無脊椎動物,つまり昆虫しか食べていないことが分かっていますので,基本的に昆虫食だけで飼育する方が良いでしょう.
また,もし与えるとしても,げっ歯類はマウスまでとし,ラットなどはより脂質が多い為与える必要はないと思います.
3.休眠について
■生後から休眠まで
休眠はサバンナモニターにとって非常に大切な要素だといわれています.乾季の初めから雨季まで彼らは脂肪体のみで生きることが出来ます.
その為,幼体時にはその脂肪体を蓄積する為に非常に貪欲な食欲を見せます.
基本的に半年食べて半年食べないと考えた方がいいでしょう.ですが,日本の飼育をみていると拒食をするといった個体をあまり見たことがありません.
基本的に乾季は拒食する傾向にあるようですが,温度変化がこの休眠を惹起すると考えれば,常に一定の温度として生体を管理することで,休眠が惹起されないものなのかは不明です.
総じて短命にあるこの種の死因は脂肪の蓄積に伴う多臓器不全と言われているので乾季には可能な範囲しっかりとエサを絞る方が生体にとってはいい影響を与えると考えてもいいかもしれません.
4.休眠期のエサ
■野生下
休眠期は約半年ほど餌を食べません.木の下や岩場に穴を掘ってそこでジッと過ごします.この間の栄養は脂肪体から賄われます.
アフリカの乾季は水も食料もほとんど枯渇する為,この時期にサバンナモニターはほとんど活動しないと言われています.
そのため,休眠期が明けた雨季の初めには彼らは驚くほど痩せています.
ですが,先にも記載したように脂肪体の蓄積が他のモニターより早いことが分かっていますので,驚くほど早く身体は回復していくとされています.
■飼育下
飼育下で拒食に陥ったという例はほとんど聞いたことがありません
(私の調査不足も否めませんが)
ですので飼育下で休眠させるべきなのかどうかの是非については,わからないといったところが本音です.
ですが,総じてこの種が肥満体で短命に終わることはおそらく彼らの脂肪代謝にあると考えられます.
急激な飢餓と脂肪の蓄積を担うことができる代謝を持っていますので,1年中エサを与え続けると脂肪体への蓄積が増え続け,その蓄積されたエネルギーを消費する程の活動もできない.
そうなると脂肪体は徐々に大きな塊状となり,腹腔内の圧亢進に伴う臓器不全や,生殖腺の変性などによる繁殖の問題など様々な健康上のリスクが起きることが考えられます.
(サバンナモニターの繁殖例をほとんど聞かないのはこの生殖器の変性が原因とも考えられる)
■おすすめのモニターについてはこちら↓↓↓
ですので,イメージとしては半年間は昆虫食をしっかり与え,半年間はほとんどエサを与えず痩せさせるといったスパンもしくは1年を通してエサをしっかり絞る.
(具体的にはげっ歯類は一切与えず昆虫食のみで飼育するなど)
他のモニターより肥満しやすい体質にあるようですので,このあたりの管理については厳密に行う必要があるのかもしれません.
5.まとめ
いかがでしたでしょうか.
非常にポピュラーかつ愛らしい姿をしたサバンナモニターですが,野生下では過酷な環境を生き抜いている逞しい生体であることも確かですね.
完全に野生下の環境で飼育する必要性については疑問が残るところですが,脂肪を蓄積しやすい体質にあるということを理解して日々の飼育の一助になればと思います.
■サルバトールモニターの飼育についてはこちら↓↓↓
■ナイルモニターの飼育についてはこちら↓↓↓
*ケージの温度管理には暖突が非常に使い勝手も良くオススメです.消費電力も抑えられていますので家計にも優しいのが尚良いです.
*暖突を使用する際は必ずサーモスタットにて温度管理してください.ケージ内の温度が上がりすぎてしまうリスクがあります.
*全てに学術的な裏付けがあるわけではないので,各生体の状態に応じて適切な飼育環境を整えてください.
**生き物を飼育することの是非はここでは問いません.また,本記事は飼育を促進するためものではありません.
生き物を飼育することは命を預かることです.その生体を最後まで責任を持って飼育することが飼育者の義務です.飼えなくなったという理由で逃がしたりすることは絶対にやめましょう