【51Base】です.
以前は比較的安価なリクガメとして専門店だけでなく総合ペットショップにも可愛らしいベビーを見ることができた本種.
ですが,非常に大型のリクガメで終生飼育は設備投資・エサ代・電気代と非常に手間とコストが必要です.
その為,飼育しきれないといった話も過去には散見されました.
現在は大型となることも織り込み済みであることと,ヘルマンリクガメ・ギリシャリクガメ・ロシアリクガメといった大きくならないメジャー種も増えたことから
「大きなリクガメを飼いたい」
といった強い意志を持たれた飼育者が多くなった…かなといった印象です.
■ヘルマンリクガメ・ギリシャリクガメの飼育
■ロシアリクガメの飼育
前置きが長くなりましたが,今回はそんな大型のリクガメ,ケヅメリクガメの飼育と飼育環境についてその生態や設備投資などわかりやすく解説できればと思います.
目次
1.ケヅメリクガメとは?
■分類
爬虫網カメ目リクガメ科Centrochelys属orリクガメ属
リクガメ属に分類する説とCentrochelys属に1属1種とする説とがあるようですが,今のところ1属1種と言われています.
1属1種と言われていますが,絶滅種もいくつか存在し現存種は本種のみとされています.
学名:Centrochelys sulcata
英名:African spurred tortoise
和名:ケヅメリクガメ
■生息域
参照:Wikipedia
アフリカ大陸の西海岸から紅海沿岸までのサハラ砂漠南端に生息.
主にはサハラ砂漠とSahelに生息すると言われています.
エリトリア,エチオピア,スーダン,セネガル,ソマリア,チャド,ニジェール,マリ共和国,ブルキナ・ファソ,ベネン,モーリタリアなど.
■大きさ・価格
全長:40cm~60cm
最大甲長:90cm
平均体重:30~45kg
最大体重:70kg
ケヅメリクガメは,アフリカ大陸に生息しているリクガメの中で,ガラパゴスゾウガメ,アルダブラゾウガメに次いで世界で3番目に大きいカメです.
またケヅメリクガメは非常に生存競争が激しく,天敵に襲われる可能性のある地域であるがために,大型化したと言われています.
若い個体では背甲はドーム上に盛り上がっていますが,成長すると共に上部が少し平らになってきます.
甲羅の外縁はのこぎり状に尖っていますが老齢の個体になるとはっきりしなくなります.
全体の色は明るい茶色や灰色で,背甲の色やコブの形状によってモロッコタイプ(白っぽく、比較的背甲がなめらか)とガーナタイプ(背甲がごつごつしていて黒っぽい)にそれぞれ分かれています.
腹甲は象牙色をしており,オスの場合はややくぼんでいます.
甲羅には成長輪といって木の年輪のように何本もの輪が見られ立派な模様を形成します.
頭部はやや小さく,太くて丈夫な前足があり,後ろ足と尾の間(太ももの内側あたり)に鶏のような蹴爪がありそれが名前の由来になっています.
成体時の体重は平均で30kg~45kgほどで,最大体重では70kgになることもあり,甲長90cmであっても非常に重量があります.
またオスよりメスのほうがやや小さい傾向があります.
ベビー個体と呼ばれる6~8cmの小さな個体では2万円前後で販売され,20cm以上になる個体になると5万円前後に価格は上がります.
やはりベビーの方が人気があるようで,成体の販売は非常に少ない印象です.
■アルダブラゾウガメの飼育
■絶滅危惧種?CITESについて
ケヅメリクガメの生息する国々では急速に都市化が進んでおり,また食用や飼育用に乱獲されることで生息数が激減しています.
特にリクガメは内戦などでの食糧問題が生じると貴重な蛋白源としても乱獲されてしまいます.
天敵から身を守るために大型化したものの,人間という新しい天敵にはむしろ好都合であったようで…少し皮肉にも感じますね…
最近ではパンケーキガメが同様の理由によりCITESⅠ類に記載され国際的な商取引が禁止されてしまいました.
本種は現在,国際自然保護連合のレッドリストに絶滅危惧種として記載されており,CITESⅡ類の対象になっており,許可のない野生のケヅメリクガメの商取引は禁止されています.(リクガメ科全種が対象です)
2.飼育環境
■飼育ケージ
15cm~20cm程度のベビーの飼育においては,60cm~90cmサイズの飼育ケージでの飼育は十分可能です.
立体活動はしませんので基本的には高さは必要ありません.
成体時は市販のケージでの飼育は不可能ですので,部屋をしっかり保温し放し飼いにする,もしくはサークルにて部屋の一部分を明け渡すくらいは必要です.
この際に注意したい点として,本種は誤飲の報告も時折ありますので,飼育部屋にプラごみなどは置かないように日頃から気を付けておいた方が良いです.
夏期など暖かい季節は屋外飼育も可能ですが,必ず脱走防止にフェンスなどを設けるとともに,小さい生体はカラスや野猫にも十分注意が必要です.
フェンスにしても本種は穴掘りが得意ですので,浅いものでは穴掘りにより簡単に倒壊してしまうリスクも…
個体差や飼育環境によって異なりますが,幼体から飼育した場合は数年で甲長50cmほどにまで成長しますので,飼育する際は最終的な飼育スペースが確保できるかどうかもよく考えてから飼育をされてください.
■爬虫類ケージの選び方
■温度・湿度
ケヅメリクガメが生息している地域のほとんどが高温砂漠気候で,年間を通して乾燥しておりほとんど雨が降りません.
日中は気温が40度に達することも珍しくなく,夜は氷点下にまで冷え込むこともあるという温度差の激しい環境で生息しています.
この温度差に適応するため,水があるところでは水や泥を浴びたり,日中の非常に暑い時は地面に穴を掘ったり他の動物の巣穴であった穴を利用して暑さをしのぎます.
スポット |
温度・湿度 |
バスキングスポット | 40℃以上 |
ケージ内温度 | 30℃ |
ケージ内最低温度 | 28℃ |
夜間温度 | 25℃前後 |
湿度 | 60%以下(多湿×) |
乾燥した通気性のよい環境を好みますので,多湿になりやすい梅雨時などはエアコンを利用するなどで調節します.
■爬虫類飼育におけるエアコン管理について
また昼間と夜間ではしっかりと温度差をつけるようにしましょう.
■温度管理と保温器具について
■紫外線
砂漠地帯で生息しているケヅメリクガメは強い日光を浴びています.
ケージ内で飼育する場合は砂漠用の強い紫外線ライトと,明るめの保温球を使ってバスキングスポットを設置します.
この明るさが割と重要で,例えばメタハラなどの様に光量が非常に強いものにすると途端に活性が上がったといった報告も良く聞きますので,必ずケージ内はしっかりと明るくするようにしてください.
ケヅメリクガメはバスキングによって紫外線(UVB)を浴びることで,ビタミンDを生成しカルシウムの代謝・吸収を行っています.
皮膚病予防に効果があるほか,甲羅や骨の形成に欠かせないので,紫外線ライトは本種には必須と考えます.
ですので特に本種などリクガメに関しては夏期の屋外飼育は非常に価値があるのではないかとも考えています.
■爬虫類の紫外線について
モニターやイグアナなどにも有効かと思いますが,脱走の危険性がリクガメよりも高いので,休日のみなど局所的なものになってしまいます.
逆に大型のリクガメなどを長期飼育されている方はベランダなど夏期は屋外での放し飼いをされている方が多いといった印象です.
3.エサ
■与えるもの
ケヅメリクガメは草食性動物ですので,基本的には野菜やクローバーなどの草類を与えます.
ただし砂漠地帯でサボテンやイネ科の植物,花などの繊維質が豊富でたんぱく質と脂質がほとんどないものを食べていますので,人間が食べる野菜や果物では本種にとっては高kcalとなる可能性が高いです.
クローバーやオオバコ,タンポポなどの野草や,ウチワサボテンのような多肉植物を与えても良いです.
その他にも,カルシウムパウダーを混ぜて与えると健康できれいな甲羅を維持できるので,リクガメの飼育には必須と考えてください.
カメ飼育者のみならず爬虫類飼育者に人気の「kame-ya」さんの【スペフー】も非常に好評ですので一考されてください.
■控えたほうが良いもの
□たんぱく質の多い野菜(枝豆、とうもろこし、ブロッコリーなど)
与えすぎると甲羅がゆがみやすくなり,凹凸もできやすくなるので控えた方が良いです.
□果物(与えすぎ)
腸内細菌に悪影響を与えて消化器系の病気になることがありますので,与えるなら週に1回程度に控えた方が無難だと思います.
■飲み水
ケヅメリクガメの生息している地域は非常に乾燥し,降雨量も非常に少ないのですが,水を飲まないわけではありません.
例えばトゲオアガマなどは餌である葉野菜などから水分も摂取しているものもいますが,スポイトからも水は飲むこともあります.
本種においても多くは餌である葉野菜や果実から摂取はしていますが,水容器は必ず設置しいつでも新鮮な飲水があるような環境は構築してあげてください.
本種においては全身が入る水容器でも浅い水だけ張れる水容器でもどちらでも構わないかと思います.
4.慣れる?飼育における覚悟
リクガメを含めたカメは割と環境適応能力が高く良く慣れます.
ですが,実際にはあまり脳は発達していないので学習能力があるというよりは習慣に近いものがあるとも言われています.
ただ,実際の飼育では頭を撫でていると眠ってしまったり,飼育者の後を追いかけるようになったりと,馴れるには馴れると考えています.
あとはクリッカーや名前を呼ぶなどの条件付けも割と有効だと思います.
地面に穴を掘るだけでなく意外と足が速く,少しの段差も乗り越えて移動するので,敷地内から出ないようにくれぐれも注意してください.
世界で3番目に大きいカメですので,いずれ必ず大きくなるということを忘れず,また活動的な種ですので,広大な敷地と環境を用意する覚悟は必要かと思います.
5.まとめ
いかがでしたでしょうか.
【ケヅメリクガメの飼育・飼育環境】
成長すると小さな子供が乗れるほど大きくなるため,そのサイズも魅力的だと思います.
ですが,四季のある日本では年中庭などの屋外で飼育するのは困難ですし,室内のケージだけで本種を飼育するのは簡単ではないかと思います.
ケヅメリクガメの寿命は長く,野生では150年生きた個体もいます.
アルダブラゾウガメと同様に,飼育するには一世代だけでは難しいことも考えられますので,他の爬虫類よりもはるかに長いスパンで飼育を考えていかなければならないかと思います.
■アルダブラゾウガメの飼育
**生き物を飼育することの是非はここでは問いません.また,本記事は飼育を促進するためものではありません.
生き物を飼育することは命を預かることです.その生体を最後まで責任を持って飼育することが飼育者の義務です.飼えなくなったという理由で逃がしたりすることは絶対にやめましょう