【51Base】です.
噛んでしまいそうな名前のトカゲですが,オーストラリアに生息するイワトカゲで,現地からの輸入は厳しく禁止されています.
日本には海外で飼育下に殖えたCB個体のみが入荷するためその流通量は極めて少なく,非常に高価なトカゲの一種です.
ただ,最近は国内での繁殖例も増えておりその流通量は少しずつ増えているといった印象です.
そして本種を始めとするイワトカゲ属のトカゲたちは,どの種も非常に強健種で飼育自体は容易なものが多い特徴があり,価格を除けばとてもおすすめしやすい爬虫類だと考えています.
今回はそんなイワトカゲの一種
【カニンガムイワトカゲ】
についてその生態と飼育方法などをまとめていこうと思います.
目次
1.カニンガムイワトカゲとは?
■分類
爬虫網有鱗目トカゲ科イワトカゲ属(Egernia)
学名:Egernia cunninghami
英名:Cunningham’s spiny-tailed skink
Egerniaは主にオーストラリアに生息するスキンクで,雑食性で強健種が多くなんでも食べ,低温にも強いものが多いです.
18種が分類されていますが,依然として亜種など混沌としているようです.
名前の由来はイギリスの植物学者「アラン・カニンガム」で,最初の標本を収集したと言われています.
■生息域
オーストラリア(クイーンズランド州,ニューサウスウェールズ州,ビクトリア州,南オーストラリア州)
【固有種】
山地にあるやや湿度が高めの岩場を生息域とするトカゲです.
岩の隙間を巣穴とし,野生下では2~17頭の群れを形成して生活します.
昼行性で活動的な性格で知られており,夜は岩場に隠れて眠ります.
かつてはオレンジや褐色の斑紋が入る個体を亜種のクレフトカニンガムイワトカゲと分類していましたが,現在は地域個体群として,一つの種類に分類する説が有力です.
また,南部に生息する個体もより黒くなる特徴もあると言われていますが,地域個体別に見たことがないので詳しくは不明です.
■大きさ・価格
平均全長:40~50cm
最大全長:53cm
カニンガムイワトカゲは,イワトカゲのなかでも比較的よく目にする(といっても他の爬虫類よりは圧倒的に少ないが…)ポピュラーなトカゲです.
トゲトゲとしたイワトカゲらしい体と活発に動く様子を楽しめるうえ,丈夫で飼いやすいと人気種でもあります.
オーストラリア原産の爬虫類はその輸出が厳しく規制されており,海外で殖えたCB個体のみが流通しますので非常に高価です.
カニンガムイワトカゲ
— プロショップダイワ (@DAIWA410137121) February 8, 2020
国内CBベビー
入荷しました✨ pic.twitter.com/TCG5yFQgrf
飼育下での繁殖例もあり,イワトカゲの中ではストケスイワトカゲと並んでポピュラーかと思います.(国内での繁殖例もあり)
生まれたばかりのカニンガムイワトカゲは,12cm程の小さな体をしており,無茶苦茶可愛いです.
最大の特徴は,全身を覆う棘状の突起がある鱗で,背面の斜めの列になった鱗の数は36~44枚にもなります.
特に尾の鱗は発達が著しく,尾の長さは全長の約二分の一程度かもしくは尾のほうがやや長くなる傾向にあります.
■絶滅危惧種?CITESについて
CITESとは,絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約の事で,本邦ではワシントン条約と呼ばれることが多いです.
この条約はかけがえのない自然の一部である動植物の保護と過度な取引利用を制限することを目的としており,条約に登録された動植物は商業利用の輸出入が制限されます.
カニンガムイワトカゲは,オーストラリア固有種という希少性はあるものの,保全状況はLC(低危険種)とされています.
現状では絶滅のおそれがなく,近い将来絶滅に瀕する見込みが低い種とされているのです.
2.飼育環境
■飼育ケージ
前述したように,カニンガムイワトカゲの全長は40~50cm程になります.
最低でも90×45×45㎝以上のガラスケージを用意すれば,終生飼育は可能と考えます.
また,本種は立体活動をよくしますので,太めの流木や岩などで高さを持たせてケージレイアウトをしても良いかと思います.
飼育ケージが小さいと,尾や背骨が曲がる原因になってしまうので注意が必要です.
また,野生下のカニンガムイワトカゲは群れをなして生活しますので,多頭飼いも可能です.
ただし,オス同士だと縄張り争いを起こし,激しくケンカをする危険性があるので,メス同士かオスとメス数匹で飼うことをおすすめします.
多頭飼いの場合は,飼育ケージも数に応じた広さが必要になりますので,3匹以上飼育する際は120×45×45cm程のケージが必要と考えます.
また,多頭飼育する際は必ず飼育頭数以上のシェルター,もしくは隠れ場所などを用意するようにしましょう.
単独飼育以上に他の生体との力関係などストレスが生じやすく,個々の成長に差が出てしまう場合もあります.
安心・安全と思える,暗く・狭い空間は必ず用意してあげましょう.
□ 生体数以上のシェルター
□ 各生体への満遍ない給餌
■温度・湿度
カニンガムイワトカゲの生息域であるオーストラリアは,雨季は気温が40℃程度まで高くなる一方で,乾季は10℃前後まで低下し,寒暖差が大きな地域でもあります.
また,雨が少ない地域であることも知られており,年間降雨量600mm以下の地域がオーストラリア全土の80%を占めます.
本種はオーストラリアの中心から南部にかけて広く分布しており,高温かつ乾燥した環境にて棲息しています.
爬虫類の飼育環境を構築するうえで最も難渋するのは多湿の環境です.
ですが,高温で乾燥した環境はバスキングスポットにてケージの温度をしっかり上げておけば自然と乾燥した環境を作ることが可能です.
また,本種の飼育のポイントとしては夜間の温度を上げすぎないといったところでしょうか.
特に乾季などは10℃程度まで気温が低下しますので低温には非常に強い種です.
ただし,冬期に夜間温度を下げるのであれば休眠させるということになりますので,餌を与えない,バスキングスポットも作らないなどの工夫が必要です.
低温でもエサを与え続けると消化不全で簡単に死んでしまいますので,保温するのか,休眠させるのかはよく考えて温度管理をされてください.
スポット |
温度・湿度 |
バスキングスポット | 45℃以上 |
ケージ内温度 | 30℃前後 |
夜間温度 | 25℃前後 |
湿度 | 40~50% |
■爬虫類の温度管理と保温器具について
■紫外線
昼行性のトカゲに紫外線は一部の生体を除いて必須だと考えます.
特に草食性・雑食性のトカゲはビタミンD3を紫外線から得ているため,サプリメントだけでなく紫外線灯も用意した方が良いと考えています.
ビタミンD3はカルシウムの吸収には不可欠ですので不足すると中長期的にクル病など骨代謝疾患を呈し,短命に終わってしまうことも…
ただ,本種に関しては何でもよく食べ,爬虫類用の人工飼料をメインに与えることもありますので強い紫外線が必須というよりも,サプリメントや人工飼料だけでは不足する分を補うくらいのイメージでも良いかと思います.
事実,エゲルニアの飼育はレフ球のみで長期及び繁殖も成功した例もありますので,紫外線の強いも高価なメタハラを使用というより蛍光灯タイプやセルフバラスト水銀灯などを使用するくらいでも良いのかもしれません.
ですので個人的にはW数の高いバスキングランプと紫外線及び光量確保のために蛍光灯タイプの紫外線灯を用いる方法が良いのではと考えています.
■爬虫類の紫外線について
3.エサ
■幼体時
カニンガムイワトカゲは雑食性で,野生下では昆虫類,節足動物,小型爬虫類,小型哺乳類のほか,果物なども食べます.
飼育下では栄養の偏りを防ぐためにも,様々な種類の餌を用意してあげましょう.
体を作るために栄養が必要な幼体時は,肉食性の強い餌を与えます.
コオロギ・デュビアなどの昆虫をメインに,野菜や果物,昆虫ゼリーを与えましょう.
若い個体用のフトアゴヒゲトカゲフードを水でふやかして与えてもよく食べますし,レパシーなども好んで食べる傾向があります.
■成体時
成長するにつれて,カニンガムイワトカゲは草食性が強くなっていきますが,多くの生体で人工飼料に餌付くものが多いので,人工飼料をメインに葉野菜や果実などを与えていきます.
比較的ゆっくりとエサを食べる傾向にあり,ベビーから飼い込んだ成体についてはその食べっぷりはスローで貫録めいたものを感じることも…
ただ,慣れるまでは餌を食べる姿を見る以前に姿すらなかなか見られないことも…
葉野菜などにはカルシウムのサプリメントを使用し,ビタミンD3は脂溶性ビタミンであるため,含有しているものは毎回でなく2-3回に1回程度でも良いです.
4.慣れる?ハンドリング
活動的な性格のカニンガムイワトカゲは,餌づけなどで慣れてくるとハンドリングも可能ですし,積極的に威嚇し,噛んでくるといった生体ではありません.
どちらかというと臆病で逃げ回る印象でしょうか…
慣れないうちはシェルターや隙間に隠れてなかなか生体の観察もできないことも.
ですが,バタバタとそして時にチョコチョコと動き回る姿はかわいらしく,トカゲの魅力を十分に感じさせてくれると思っています.
最近ではハッチ後のベビーの流通もちらほら見かけますので,そういった生体を育て上げると非常に良く慣れ,最高のペットリザードとなってくれるでしょう.
5.まとめ
いかがでしたでしょうか.
【カニンガムイワトカゲの飼育】
丈夫で何でも食べ,低温にも強い非常におすすめしやすいトカゲではありますが,流通量が乏しく,非常に高価なトカゲですので,飼育者は決して多くはないかと思います.
ですが,近年は爬虫類の輸入が減少している傾向もありますので,いつまで海外からのCB個体が入ってくるかは不明です.
非常に貴重な生態ですので,飼育する際はしっかり飼い込み立派なイワトカゲに育て上げてください.
**生き物を飼育することの是非はここでは問いません.また,本記事は飼育を促進するためものではありません.
生き物を飼育することは命を預かることです.その生体を最後まで責任を持って飼育することが飼育者の義務です.飼えなくなったという理由で逃がしたりすることは絶対にやめましょう