【51Base】です.
エメラルドツリーモニターの
飼育・飼育環境
ツリーモニターとしての独特なフォルム.そしてその美しいライムグリーン.
多くの爬虫類ファンを魅了してきた本種,実はとても希少な種なのですが,過去には割と乱雑に扱われてしまった時期もありました.
そして,安価であった故に比較的飼育が簡単な様にも思われていますが,海外では飼育が困難なモニターの一種としても挙げられています.
それは繁殖にも言えることで,ツリーモニターの繁殖についてはまだまだ分からないことが多いことも事実です
(私が知らないだけかもしれませんが…)
最近はその小さな体と美しい体色,そしてモニターとしてのカッコよさを兼ね備えた本種はコバルトツリーモニターと並んで非常に人気のあるツリーモニターとして名を知られるようになってきました.
今回はそんな美しいツリーモニターの一種,エメラルドツリーモニター(以下,エメツリ)にスポットを当て,飼育環境や生態についてまとめていきます.
目次
1.エメラルドツリーモニターとは
■分類
爬虫網有鱗目トカゲ亜目オオトカゲ科マングローブオオトカゲ亜属Varanus prasinus
和名:ミドリホソオオトカゲ
英名:Green Tree Monitor / Emerald Tree Monitor
同属のツリーモニターとして
・コバルトツリーモニター
・コルデンシスツリーモニター
・イエロースペックルツリーモニター
・ブラックツリーモニター などがいる.
■生息域
ニューギニア島・パプアニューギニア
参照:Wikipedia
他のツリーモニターと生息域が重なったりしており,同属の異種交配についても報告があるようです.
(過去に飼育していたエメツリはオスで,メスのイエローヘッドモニターにとても発情していた)
そして本種は過去に非常に安価に取引されていた時期がありました.
私が初めて本種を飼育したのは2009年頃で,その際の金額は約30000円ほど(現在は80000~130000程度).
なぜこの当時,ここまで大量にWCやFH個体が輸入されていたのかはわかりませんが,とにかく安価で手に入るツリーモニターの代表種だったと記憶しています
(今でもツリーモニターの中では安価ですが…)
■大きさ
全長:70cm~100cm
最大全長:120cm
ツリーモニターは全体的に非常にスリムな体型をしています.
それは樹々の間をすり抜けて移動したり,幹の間に身を隠したりするときに役立ちます.
そんなツリーモニターの中でも恐らく本種は最も小さい部類に入ると思いますし,ベビーの頭胴長は成人男性の親指程度しかありません.
また,その大きさの2/3は尻尾ですので,最大でも頭胴長が30cmでもあれば大きな方かと思います.
また本種はその小ささゆえにあまり攻撃的ではなくどちらかと言えば臆病な印象を受けます.
(CB個体はまた別物)
■モルフ?
モルフと呼べるほど本種はCB化には成功していませんが
・ブルーバック
・ブラックバック
といった色彩に微妙な変化を呈した生体が確認されています.
出典:Wikipedia
個人的にはこういったモルフはまずアメリカかドイツ,もしくは現地ファームで増やされてしばらくして日本に入ってくる印象です.
*私の飼育しているメスのエメツリはブルーバックです.
もしかすると披露していないだけでとんでもないモルフが実はいるのかもしれませんね.
実際に飼育している4種を見比べてみてもそれぞれ色合いや模様などに違いが見られます.
個人的にはツリーモニターの中では抜群に美しい種だと思っています.
2.飼育環境
■飼育ケージ
基本的に本種は樹上棲のモニターですので,高さのあるケージが基本になります.
また,大きさの部分でもお話しましたが,その大きさの2/3は尻尾ですので,思っている以上に小さいと思います.
飼育開始時はグラステラリウムなど高さを重視したケージで飼育を始める方が無難です.
そして最終的には高さと横幅を考慮した120×60cmのケージが準備できれば終生飼育も可能だと思われます.
エメツリであれば90✕60㎝のケージでも飼育できないことはありませんが,可能であれば120㎝以上のケージをおすすめします.
こういった温室タイプをケージとして使用する飼育者も多いです.
(ただし非常に保温は大変です)
本種の最大の魅力はその細い体で樹々の間をスルスルと移動する姿や,高木でバスキングをする姿でしょうか.
その魅力を最大限に引き出すためにも,出来る限り大きなケージで飼育してあげてください.
■温度・湿度
本種に限らずネシアンモニター全般に言えることですが,基本的に高温多湿です.
彼らが生息している東南アジアは熱帯性気候になりますので,年中気温は高い傾向にあります.
唯一乾季の2カ月程度は降水量が少なくなり,気温も下がりますが日中のバスキングスポットは年中同等の温度で構いません.
参照:地球の歩き方
また,本種をはじめとする爬虫類の飼育において意外に見過ごされがちなところは夏の気温上昇です.
暑いから大丈夫ではないのかと思われる方も多いのですが,ここ数年,日本の夏は非常に高温多湿の環境になりつつあります.
その状況下で室内で通気性の悪いケージで飼育しているとケージ内温度が40℃を超えてしまいオーバーヒートで生体がやられてしまうこともあります.
夏の暑さについてもしっかりと対策をしましょう.
■爬虫類の暑さ対策
*温度・湿度
温度 | |
ホットスポット | 40-45℃ |
ケージ内温度 | 28℃前後 |
夜間温度 | 26℃前後 |
湿度 | 70%以上 |
ポイントとしては日中の気温と夜間温度の変化はあまり大きくしないところでしょうか.
熱帯雨林は砂漠や草原と比較して熱が籠りやすいので夜間も気温が下がりにくい傾向にあります.
また,ホットスポットに関してはあまり高すぎなくても良いといった飼育者の話も聞きますが,例えばアガマなどの様にじりじりと焼けるような暑さまでは必要なく,ホットスポット直下のみ高温としていればある程度は温度を生体が選べるのでそちらでも良いのではとも考えます.
そしてツリーモニターの飼育で肝となるのは,湿度管理です.
本種をはじめとするツリーモニターは乾燥気味な湿度ではその美しい体色が白みがかり,そして脱皮不全を容易にきたす傾向があります.
部屋全体を加湿器で加湿するか,ケージ内に霧吹きをする,ドリップを使用する,ケージ用の加湿器を使用するなど必ず対策をとるようにしてください.
■湿度管理について
非常に乾燥に弱い種ですので湿度管理については特に気を使ってください.
■紫外線
紫外線は昼行性のトカゲについては必須だと思います.
ですが,長期飼育者の方や海外ブリーダーの方などで紫外線灯を用いずにレフ球のみで長期飼育,繁殖も成功させている方が多くいることは事実です.
紫外線の特にUVBが重要であることは周知かと思われますが,その役割としては主にビタミンD3の生成です.
■紫外線については
そしてこのビタミンD3は自然界では非常に少ない傾向にあります.
最も多く含まれている食材は
・魚
そして次に
・卵黄(肝にも多少含まれると言われています)
そしてモニターが多く摂取する獲物としては
・昆虫
・鶏の卵
・魚
です.昆虫についてはたんぱく源や脂質の多さは注目されていますが,ビタミンDについての含有はないはずです(間違っていたらすみません)
そして本種については自然界で主に昆虫や鳥の雛や卵を狙って食べることがわかっています.
ですので,ビタミンD3は食事から十分摂取できていることが考えられますが,いつも鳥の卵や例えば魚を捕らえられているかと言われれば疑問が残ります.
■モニターの紫外線について
そのため,UVBからビタミンD3を体内で生成することは飼育下でも重要なのではないかと考えています.
(もちろん飼育生体は定期的に卵黄や魚介類をエサとして提供できる環境にあるため,紫外線灯がなくとも摂取量が不足していないと思われる)
自作ケージまでの仮住まい。(60*45*60)
— Wutang36 (@NoMusicNoWutang) August 10, 2022
グラテラのバックボード取ったほうがいいかな。
なんかこれで満足しちゃったかもw#エメラルドツリーモニター pic.twitter.com/j9zv5I8dqQ
また長期に飼育している方々はモニターの飼育に精通したプロです.
食事の栄養管理など,知識も経験もある方々ですので,まずは紫外線灯や紫外線を含んだ水銀灯などから始めても良いのではないかと思います.
紫外線灯はGEXの商品が最もポピュラーです
水銀灯は主にこの3種類から選ばれることが多いです
もしも初めて飼育するモニターがエメツリであるならば,紫外線灯は少なくとも用意した方が無難かと思います.
3.エサ
■幼体時
本種の幼体時はとにかく小さいです.
最近はベビーの入荷が成体よりも多い印象ですが,本種のベビーは本当に小さいです.
基本的には昆虫を中心とした給餌で,コオロギやデュビアなどを与えます.
活き餌にしか反応しないものもいますが,乾燥コオロギなどに餌付けば比較的管理は楽かもしれません.
給餌の際は必ずカルシウムのサプリメントを使用してください.
その際に,ビタミンD3を含むものと含まないものがありますが,ビタミンD3は脂溶性ビタミンですので過剰摂取は高カルシウム血症など引き起こし腎臓や心臓への負担がかかりますので,使い分ける必要があります.
また,ツリーモニターに非常にスリムな体型をしていますので,げっ歯類などを与えすぎるとすぐに体型が崩れてしまい肥満体型となってしまうので注意が必要です.
■成体時
成体時も同様に無脊椎動物,つまり昆虫を中心とした給餌を心がけた方が肥満防止になります.
恐らく多くのモニターが肥満による影響で短命となっていると思われますし,本種の様に昆虫を中心とした食事を摂っているものはより注意が必要かと思います.
ですが,卵はビタミンDの摂取の意味も含め,ウズラの卵などを与えても良いと思います.
いずれにしても粗食な給餌が生体の肥満防止には効果的です.
4.ハンドリング・慣れる?
本種はどちらかと言えばハンドリング向きの生体ではありません.
ツリーモニターの特徴としては何といってもその長い爪です.
それでいてオオトカゲですので,無理にハンドリングしようとすれば手は傷だらけになってしまいます.
最近、有名youtuberが飼っているエメラルドツリーモニターにかまれて病院に行ったという記事がありました。
幼体時でしたらまだいいので,幼体時から飼育する場合は良いかもしれませんが,成体であれば無理にハンドリングするより,観賞用として割り切った方が飼育者も生体も幸せかもしれません.
そもそも爬虫類は触れ合いを求める生き物ではないので…
慣れればある程度は触れるものもいます.
そして本種はその尻尾を攻撃に使用することはあまりありません.
怯えたり危険を感じると尻尾を丸めて身を小さくし攻撃を受けないようにします.ですので,本種は割と神経質な個体が多いとも言われています.(WC個体は特に)
ですが,ツリーモニターの中でもCB個体は割と慣れやすい傾向にあるのと,コバルトツリーモニターは比較的人間を恐れない様な印象です.
恐らくこれは生息してきた環境に人間の干渉がなかったからとも考えられますが.
■コバルトツリーモニターについて
■モニターの慣らし方について
いずれにしても時間を掛けながら,環境・飼育者に慣れてもらう様にしましょう.
5.まとめ
いかがでしたでしょうか.
エメラルドツリーモニターの
飼育・飼育環境
ツリーモニターの中では比較的安価に取引されている本種ですが,その希少性と美しさはモニターの中でも随一だと思います.
成体時の大きさも多くの方にとって手に負えるサイズですので,最終的な飼育環境も想像がつきやすいので飼育開始のハードルは比較的低いのではとも感じます.
ですが決して飼育難易度が低いというわけではありません
(生き物の飼育に簡単も難しいもないものだとは思っていますが…)
飼育を検討される際は終生飼育が可能か,また飼育環境を整えることは可能かをよく考えるようにしましょう.
**生き物を飼育することの是非はここでは問いません.また,本記事は飼育を促進するためものではありません.
生き物を飼育することは命を預かることです.その生体を最後まで責任を持って飼育することが飼育者の義務です.飼えなくなったという理由で逃がしたりすることは絶対にやめましょう