【51Base】です.
【爬虫類飼育におすすめの除菌剤】
~次亜塩素酸水・ジクラアギトなど~
皆さんはメンテナンスの際にどのような除菌剤もしくは消臭剤を使用されていますか?
これから爬虫類を飼育してみようと考えている方,爬虫類の飼育を始めたばかりの方などまずは生体の情報に目が行きがちかと思いますし,それは決して悪い事ではないと思います.
では実際に飼育を始めて恐らく最も日常的なRoutine workは清掃と水替え,そして給餌ではないでしょうか.
そのすべての過程で除菌・消臭は非常に重要な要素だと個人的には考えています.
「無菌状態で飼育するのか?」
「潔癖すぎるだろ」
と,お怒りの言葉が飛び交いそうです,自然界では常に環境は変わっていますし,排せつ物などを分解するバクテリアなども存在します.
飲水も川であれば浄化されていますし,雨水だってあります.
ですが飼育下ではどうしても限られた生活空間しかありません.
不衛生な環境でもその環境を改善するバクテリアなどはいません.私たちがある程度は環境を保全する必要があると考えています.
そこで今回は,使用してきた中で良かったと感じるものや,実際に細菌や真菌・ウイルスなどへの効果などを検討していきたいと思います.
*あくまで個人的に使用してきたものを中心に記載しています.犬猫用に販売されているものでも非常に効果が期待できるものも数多くあるかと思いますが,使用経験がないのでここでは割愛させていただきました.
【内容】
1.除菌・消毒・殺菌とは?
■概念
■効果的な方法とは
2.各成分による作用
■エタノール(アルコール)
■逆性石鹸
■次亜塩素酸水
3.おすすめの除菌剤4選
■ジクラアギト
■peletty
■次亜塩素酸水
4.不衛生な飼育環境
■病気
■感染症
■臭い
5.まとめ
目次
1.除菌・消毒・殺菌とは?
■概念
除菌・消毒・殺菌(滅菌)と言えばどういったイメージをお持ちでしょうか?
漠然と殺菌(滅菌)>消毒>除菌といった感じでより強力な作用をイメージされる方が多いと思います.
□殺菌(滅菌):
細菌や真菌・ウイルスなどを死滅させる事を指します.
□消毒:
細菌やウイルスを消失させることを指しますが,害を及ぼさない程度までで,滅菌の様に厳密に死滅させるといったわけではない.
□除菌:
菌を除いて減らすことを指します.
簡単に説明するとこのようなイメージで良いかと思います.
感染や微生物を専門とする研究者や医療者はより細分化し,専門的な概念にて話をされますが,今回は爬虫類の飼育環境に対してですので,あくまで一般的な概念に留めさせていただきました.
殺菌・滅菌については,生体を飼育するうえで,生体の生命にもリスクがありますので,日ごろのメンテナンスでは除菌を中心に考えても良いでしょう.
そして時々生体のケージやピンセットなど直に触れるものを滅菌するといったイメージでしょうか.
■最も効果のある消毒・殺菌・除菌方法は?
最も効果的…というより確実に死滅させる最も確実な方法は
「焼却」
と言われています.
ただ,これは殺菌したい目的物そのものも喪失してしまうので,爬虫類飼育においてはあまり現実的ではないかと思います.
ピンセットや陶器のシェルター,エサ入れなどの滅菌方法としては
「煮沸消毒」
100℃で5分ほど,煮沸したお湯の中にてほとんどの細菌やウイルスは死滅します.
厳密には「消毒と滅菌のガイドライン」1)では器具類は80℃で10分が条件として規定されています.
個人的には爬虫類の飼育するうえで器具のメンテナンスで最も確実で適当な方法は煮沸消毒であると考えています.
2.各成分による作用
■エタノール(アルコール)
いわゆるアルコールの一種です.
消毒用のエタノールが市販されており,殺菌・消毒に非常に高い効果を発揮します.
以前はウイルスには効果がないと言われていましたが,最近はインフルエンザウイルスにも効果があることがわかっていますので,全てのウイルスに対して無効というわけではなさそうです.
爬虫類を飼育しているうえで特に気を付けたいものとしては
「サルモネラ感染症(細菌性胃腸炎)」
人間にも容易に感染し,乳幼児や高齢者では命に関わることもありますので,決して油断はなりません.
ミドリガメやイグアナが有名ですが,あれは子供がよく触る代表的な爬虫類ですので事例が表面化しやすいだけで,実際にはヘビで最もサルモネラ菌は常在していると言われています.
エタノールは非常に高い殺菌・消毒作用がありますので,使用後のピンセットや手指の消毒には積極的に用いたいところです.
ただし,引火性が非常に高いのでバスキングランプやパネルヒーターなどがあるケージ内での使用は控えた方が良いかと考えています.
*私はいつも自身の手指消毒の為に使用しています.
■逆性石鹸
陽イオン界面活性剤と呼ばれいわゆる石鹸とは対比的な成分です.
ちなみに逆性石鹸に洗浄力はほとんどありませんので,例えば手洗いなどでは普通石鹸でたんぱく質などの汚れを洗い流した後に使用するとより効果的だと言われています.
逆性石鹸の一番の特徴は陰イオンの性質をもつ「細菌・かび」に吸着し,細胞を破壊することで,殺菌・消毒の作用があると言われています.
ただし,ウイルスには効果が薄いようでノロウイルスやインフルエンザウイルスには効果がありません.
除菌だけを考えれば普通石鹸でも十分な除菌作用はあるので,洗い流せるものなどはその都度,普通石鹸で洗い流すのも良いでしょう.
爬虫類に使用する場合は,基本的に原液は非常に刺激が強く危険ですので必ず希釈するようにしましょう.
人間の場合でも400倍程度には薄めるようにと言われていますので,爬虫類のケージ清掃などにも同様に希釈する方が良いかと考えます.
日頃からケージ清掃には使用していませんのでもしかすると生体によっては不具合が起きる可能性も拭えませんので,使用する際は特に注意してください.
また,逆性石鹸は汚れなどがある場合に非常に効果が薄まりますので個人的にはケージ清掃にはあまり向かないかなとは考えています.
■次亜塩素酸水
次に塩化ナトリウム水溶液を電気分解することによって得られる次亜塩素酸を主成分とした水溶液,次亜塩素酸水です.
非常に低濃度であっても細菌・ウイルスに効果を発揮し,爬虫類飼育だけでなく私たちの日常生活でも非常に活躍してくれます.
濃度によって作用に違いがありますが,有機物などには1%程度の濃度での使用が推奨されます.
(いわゆる吐物や便の処理です)
ちなみに次亜塩素酸と言えば思い浮かべられるものは,次亜塩素酸ナトリウムの「ミルトン」や「ハイター」などがあると思いますが,次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウムは違うものです.
簡単に言えば
pH値が5.0~6.5(弱酸性)
⇒ 「次亜塩素酸水」
pH値が12以上(強アルカリ性)
⇒ 「次亜塩素酸ナトリウム」
次亜塩素酸ナトリウムはアミノ酸を加水分解しますので,蛋白質を破壊してしまいます.
つまり原液が肌に付着すればそこにケロイド症状を引き起こすリスクがあります.
また,次亜塩素酸ナトリウムは有機物などには非常に効果を示しますが,除菌力では次亜塩素酸水の方が優れていますので,人体・生体への影響も考慮すれば次亜塩素酸水を使用することがより安全かと思われます.
基本的にほとんどの細菌やウイルスに効果を発揮しますので爬虫類飼育においても最も頼れる存在なのではないかとは愚考しています.
3.おすすめの除菌剤
■ジクラアギト
爬虫類飼育において聞いたことがない人はいないであろう「有限会社ジクラ」から販売されているジクラアギト.
どちらかと言えば消臭効果に期待を持つことが多い本商品もしっかり除菌効果については謳われていますね.
天然植物エキスを使用しているので基本的には生体には無害でしょう.
しかし除菌力はどの程度かについて,具体的な記載はありませんので,日常の清掃時に消臭・除菌として使用するものとして持っておいても損はないかと思います.
個人的にはジクラアギトの独特な臭いが大好きですので,飼育部屋に常時2-3本はストックしています(笑)
あとはポゴナクラブさんから発売されている「レオパミスト」といったものもあります.
コンパクトですし,こまめに使用もしやすいので重宝しています.主に次亜塩素酸水が原料となっておりますので,下記の項を参照いただければと思います.
■Peletty
多くの動物病院で使用されている除菌・消臭剤で,二酸化塩素やエタノール,界面活性剤,防腐剤など人体・生体に害のあるとされている成分は使用されていません.
ウイルスの除菌率が99.9%と高い除菌効果を持っていますが,概ね現在販売されている除菌剤も同様の効果が認められることが多いとは思います.
ただ,多くの動物病院で使用されており,その除菌・消臭効果には定評があるようです.もちろん安全性も高く,生体が舐めたりしても大丈夫です.
個人的には無香料で塩素臭含め,ほとんど臭いがないところが個人的には気に入っています.
■次亜塩素酸水
個人的には次亜塩素酸水が最も信頼でき,かつコストパフォーマンスに優れた商品ではないかとは思っています.
(今回の記事でもほとんどこれが言いたいだけの様な気もしますが…)
除菌効果については上記に挙げた通り,細菌だけでなくウイルスにも非常に高い効果を持ち,かつpH値5-6.5と弱酸性を示しますので生体・飼育者ともに安全に使用が可能です.
(だからと言って生体に直接吹きかけることは可能な限り避けた方が良い気はしています)
また,有機物と反応して水に戻る性質があり,飲んでも安心で,食品添加物としても認可されています.
唯一の欠点と思うところが金属の腐食でしょうか…
ただし,無塗装の鉄などに直接吹きかけなければ大丈夫と言われていますが,爬虫類ケージの上蓋や自作ケージでしようする網などは錆びます←経験済み…
私は飼育ケージのほとんどが自作の木製ケージでスネークタワーなどは上部でなく後上方部に通気の為の金属網を張っていますので,清掃時にどうしても次亜塩素酸水が降りかかってしまいます
上部に通気口がある場合は割と安心できますし,ステンレスは大丈夫の様ですので,この悩みは私だけかと思いますが…
コスパが非常に良いといったのは5倍~10倍程度に希釈して使用するため,思っている以上に長持ちします.
保存期間もメーカーによって違いはありますが,概ね半年~1年以内の使用を推奨されているところが多いかと思います.
また,紫外線に当たると劣化が早まりますので,遮光容器に入れるようにしましょう.
こちらの「ZIA STOP」は希釈不要のストレートタイプなので希釈が面倒な方にはおすすめです。
4.不衛生な環境
■病気
不衛生な環境は臭いの原因や細菌の増殖を助長したりと生体にとっても飼育者にとっても病気のリスクが高まることが懸念されます.
■爬虫類の突然死について
■パイソンの肺炎について
基本的に爬虫類は原始的な生き物で,多くの種類で比較的丈夫なものが多いと思います.
ですが限られた環境下では容易に体調を崩すこともありますし,他の生体にも容易に感染します.
過去にマイコプラズマ肺炎が飼育部屋に蔓延し,飼育していた生体が全滅してしまったとの話も聞いたことがあります.
特に爬虫類は多くの種で高温多湿の環境を好みます.
□ 細菌
□ ウイルス
□ カビ
□ ダニ
ウイルスなどは低湿度の環境で活性化すると言われていますが,高湿度下でも感染力は低下しないといった報告もあり,油断はできません.
(といってもインフルエンザの報告で,人間に対してですので爬虫類に感染するウイルスでどうかについては不明です)
■感染症
不衛生な環境が続くと生体の体調が崩れ,免疫力が低下します.
化膿性口内炎のマウスロッドや肺炎,肺炎からくる食道炎,細菌性腸炎など様々な病気・感染症が危惧されます.
不衛生な飼育環境は不衛生な飼育器具を使用している可能性も高いので,ピンセットの使い回しや給餌の際に口内に傷をつけてしまうなど感染症のリスクを助長します.
特にマイコプラズマ肺炎などは唾液や鼻水から容易に直接感染・飛沫感染をしますし,空気感染についてはどれほど感染力があるのか現状わからないと言われたことがあります.
(爬虫類の病気についてはわからないことが多いそうです)
免疫力が低下した生体では特にヘビで,サルモネラ菌による急性腸炎を発症する者もいます.
サルモネラ菌はヘビで多く保菌していると言われていますので免疫力が低下した生体はサルモネラ菌に負けてしまいます.
この際にやはり便などを放置したり,処理した手でそのまま他の生体を触ったりすれば感染のリスクは高まると考えられますが,便を直接つけたりなどなければそこまで感染のリスクはないと獣医師に説明を受けたこともありますが,用心に越したことはないかと思います.
感染症は他の生体にも影響を及ぼしますので,清潔な飼育環境はとても重要な要素です.
■臭い
最後に臭いですが,はっきり言って糞をそのままにした環境の飼育ケージは非常に臭いです.
(テラリウムなどで便の分解を促すようにされている場合は別)
特に肉食や雑食性のトカゲに関しては非常に粘状で水分をよく含んでいますのでなかなか臭いも強烈です.
■爬虫類の臭い対策
■糞・臭いとの闘い
また,糞を長期間放置しておけば細菌などの温床となりますので,当日か遅くとも翌日には処理した方が無難だと思います.
臭い対策でも記載しましたが個人的に糞の臭いには
「ニオイノンノ」
を加湿器に入れて使用する方法が最も効果的かと思っています.
加湿器を24時間使用するときは必ず水の入れ換え時に界面活性剤や次亜塩素酸水で除菌することを強くお勧めいたします.
5.まとめ
いかがでしたでしょうか.
【爬虫類飼育におすすめの除菌剤】
爬虫類飼育は限られたケージ内で生体を飼育することが多いので,その環境因子は飼育者に全て託されます.
不衛生な環境では生体を終生飼育することが出来なくなるだけでなく,私たち飼育者にも多大な影響を及ぼしてしまうこともあります.
決して血眼に無菌状態の様な環境を追い求めるといったわけではなく,糞の処理や水替え,ケージの清掃など最低限のメンテナンスを行えればそれが一番清潔な環境だと思っています.
私自身も飼育経験だけは自身がありますが,生体を病気で死なせてしまったり,ケガをさせてしまったりと失敗もあります.
決してプロというわけではありませんが,こういった経験を少しでも共有でき,参考にしてただければ幸いです.
【参考文献】
1)小林寛伊 編, 新版消毒と滅菌のガイドライン, 消毒・滅菌法 基礎と実際, へるす出版.東京.2011.
**生き物を飼育することの是非はここでは問いません.また,本記事は飼育を促進するためものではありません.
生き物を飼育することは命を預かることです.その生体を最後まで責任を持って飼育することが飼育者の義務です.飼えなくなったという理由で逃がしたりすることは絶対にやめましょう