【51Base】です.
【ベビーのオオトカゲを立ち上げる】
~生体の立ち上げに失敗した小経験~
今回は私自身が生体の立ち上げに失敗した話を中心にまとめています.
「情報サイトを運営しているくせにベビーの立ち上げもできないのか?!」
と叱責を受けしまいそうですが,失敗例から学ぶことも多いと思いますし,正直私もこれまでに何度も失敗をしてきました.
その都度,何がダメだったのかを自己考察していますが,少しでも生体の死を無駄にしたくないという気持ちから今回の記事を書くことと致しました.
この記事が生体の立ち上げに苦労されている方の一助となれば幸いです.
*本記事はあくまで私個人の経験によるものです.また,購入先や医療機関を批判する記事でもありません.
【内容】
■各経過について
経過①
購入から飼育開始時期
経過②
購入2週後,動物病院へ
経過③
2度目の受診
経過④
症状は改善傾向に
経過⑤
3度目の動物病院
経過⑥
生体の窒息
経過⑦
4度目の動物病院
経過⑧
強制給餌と最後の希望
■今回の立ち上げから学ぶこと
□立ち上げきれなかった理由
1)過度な干渉
2)抗生剤が合わなかった
3)飼育環境??
□今後どうすればよいか
1)生体の状態はしっかり確認する
2)異常を感じたらまずは専門機関へ!!!
3)栄養価の高いエサを与える
4)放置
■まとめ
目次
■各経過について
経過① 購入から飼育開始時期
生体購入から立ち上げに関しては以前の記事にもまとめていますが,到着後はとにかく温浴と水を飲ませてやることから始めます.
本生体は事前情報としてハッチ1カ月以内のベビーである事,店ではコオロギを追いかけ回して状態は良いとのこと.
輸送機関は15-6時間程度で,空輸含めて死着の経験はなく,何度も同様の方法で生体の購入をしているので特に大きな心配はしていませんでした.
実際に生体を受け取ってまず思ったことは
「予想より小さいな…」
まさに手のひらサイズで,海外からと国内での輸送でかなり負担を強いていると思われます.
即座に37℃程のお湯で温浴と給水を行い,良く水を飲めていたので一安心ですが,動きが乏しくすぐに目を閉じてしまう.
飼育開始時の環境は以下の通りで,ホットスポット下はしっかりと温め,ケージ温度は30℃程度としました.
翌日には便の排泄を確認.
体重は28g.
経過② 購入2週後,動物病院へ
2週間ほど状態を観察していましたが,呼吸状態に変化がないことと,鼻腔が詰まっているようで鼻水も認められ,更には痰が多く出ていることも確認したため,近医へ受診.
その際のレントゲンが下図です.
トカゲのは胃は哺乳類のように肺胞が密でなく荒い為,肺炎像ははっきりとは写らないようですが画像を見る限り肺炎である事は間違いないとの診断.
ビタミン剤と抗生剤のシロップを処方してもらい1週間の投薬を開始することに.
呼吸状態は苦しそうではあるも,この頃にはコオロギを1日3-5匹程度は自力で食べるようになり排便もあったため状態は軽快すると期待していました.
引き続きケージ内温度は30℃を継続し,脱水防止のため水張り飼育とし温湿度管理は徹底しておりました.
体重:30g
経過③ 2度目の受診
1週間ほどシロップの抗生剤を投与したものの,開始3日目より食欲の減退が見られ活性が落ちてきたため再度受診.この時購入3週目.
状態は変わりなさそうとの判断で,シロップは効果が薄いので7日間持続の抗生剤を注射してもらいました.
大動物に使用するものの様ですがボールパイソンに使用経験もあるとのことで,改善が見られないなら…とのこと.
投薬後シロップは継続で毎日朝に与えていきました.
この頃から口腔内の鼻孔に膿が溜り始め,いわゆるマウスロットの状態になっており,膿の除去と洗浄と自身にて実施.痰の量は相変わらずといった状態.
またそれに伴い目から涙が良く出るようになり,視力が落ちてきたかな?といった印象を覚えるようになりました.(近くのコオロギは見えるが、遠くにいるものに対しては全く反応しなくなる)
また,同腹と思われる生体の立ち上げを成功させた方のアドバイスにて35℃の高温にて代謝を上げることとしました.
ただし,水張にして体を冷やせる場所はしっかりと設けています.
体重:30g
経過④ 症状は改善傾向に
2度目の受診後に一時的に食欲は減退しましたが,症状は徐々に軽快傾向に向かい,活性も上がってきました.
やはり3日目くらいに食欲の減退はあるもののそれでも5日目にはまた自力でコオロギを食べるようになり,このまま軽快するかと思われました.
購入して約1カ月,ようやく状態は上向いてきたかと思われ,呼吸も少し改善してきている様です.
ただそれでも痰は変わらず少しでも湿度が落ちると粘性の粘っこいものが…
目からの涙も変わらず.
温度は引き続き日中も35℃・70%以上の高温で管理.
体重:29g
経過⑤ 3度目の動物病院
前回受診から1.5週で再度受診.この時で購入後5週目に入っていました.
餌は引き続き自力摂取が可能で,少し食は落ちてきたかな…といった印象ではありましたが1日3-4匹程度は食べていました.
下図がレントゲン画像です.
ちょっと画質が悪くて申し訳ないですが上図がこの時撮影したもので,下図が3週間前のもの.
いわゆるすりガラス陰影(爬虫類でそういうかは不明)ですが,症状は改善傾向であろうとの判断.
この時,抗生剤を開始して3週間が経過していましたが,効果が見られたと考えられたため,最後にもう一度7日持続の抗生剤を注射し,シロップの抗生剤を継続で処方されました.
また目の症状については眼軟膏を処方してもらい1日1回の使用を開始.
恐らくこのまま軽快に向かうものとこの時は信じていました.
体重:29g
経過⑥ 生体の窒息
抗生剤を投与し4日目の朝にいつもと同じようにシロップの抗生剤を経口にて投与.
特に変わった様子はありませんでしたが,その後の監視カメラの映像がこちら…
投与後10分ほどで呼吸困難からか暴れまわり,明らかに異常な状態.
この時,偶然飼育部屋に入った為すぐに異変に気付き生体を持ち上げると完全に弛緩状態で呼吸もしていませんでした.
すぐに蘇生と口腔内の吸引(シリンジで)すると,大きく口を開けてかなり苦しそうにも呼吸を再開してくれました.
呼吸再開後の状態↓↓
何が原因かはっきりしませんでしたが,シロップを投薬後でしたのでそれが原因か…と愚考していますが…
この時にかかりつけ医は年末年始の休業中でしたので一旦投薬を休止し,様子を見ることとしました.
経過⑦ 4度目の動物病院
結局動物病院への受診が出来たのは窒息後6日目でした.
それまでの6日間は活性が一気に落ち,歩くのもままならずコオロギも1₋2日に1匹食べる程度まで餌食いも落ちてしまいました.
この時で体重は27gにまで低下し,目に見えて痩せてきた印象.
動物病院に受診した際も状態的に治療は難しいとの判断で,同薬の継続と抗生剤の注射,そして酸素室の説明も受けました.
酸素室に関しては,爬虫類に対するエビデンスはありませんし,酸素の要求度が哺乳類とは違うと思いますので躊躇しましたが,ホットスポットが設置困難でケージ内温度を30℃程度までしか上げられないとのことでしたのでこの時は見送りました.
経過⑧ 強制給餌と最後の希望
1週間経過を見ても変わらず,餌も取れなくなったのでピンクマウスをミンチとし,それをシリンジで強制給餌を行うこととしました.
この時の体重は25gまで低下していました.
さすがに画像は撮っていませんが…
そして最後の希望として,同様の症状を呈していた生体に家畜用の抗生剤を使用したところ効果があったとモニター仲間から情報を頂き,藁にもすがる思いでその薬を個人輸入で取り寄せていました(あくまで自己責任の範囲).
大動物用ですので使用量などは不明でほんの数g程度かとは思っていましたが…
ですがその希望も叶うことはなく,薬が到着したその日に死んでしまいました.
死後は肺の状態が知りたく解剖することを考えましたが,1.5カ月頑張ってくれたことと,まだ生まれたてのベビーであったこともあり,とてもお腹を開くことができませんでした.
■今回の立ち上げから学ぶこと
今回,ハッチ仕立てのベビーの立ち上げに失敗してしまい,尊い命を奪ってしまったのですが,なぜ立ち上げ切れなかったのか?今後,気を付ける事などを少しまとめます.
□立ち上げ切れなかった理由
1)過度な干渉
生体の立ち上げに関して私はいつも過干渉は避けています.
まずは飼育環境に慣れさせて輸送のストレスを軽減させてあげるところですが,あきらかに呼吸が異常であったこともあり,過干渉となってしまったと思います.
特に飼育開始して1カ月程の頃には改善が思わしくなく口腔内の洗浄や殺菌など過剰に行ってしまったかとも思っています.
活性と代謝がしっかり上がる環境を構築して,栄養価の高いエサを与え”放置”した方が生体にとっては一番よかったのかもしれません.
2)抗生剤が合わなかった
正直こればっかりは獣医師ではないのでわかりようはないのですが,細菌によるものか,ウイルス性かははっきりしないことも多く,特に地方の動物病院ではいくらエキゾチックアニマルを見れる病院であったとしても限界がある事がわかりました.
薬についても爬虫類用といったものはなく,わかっていないことが多いことも事実です.
実際,肺炎症状が完治された同腹の個体はいずれも市販薬や家畜用の薬などを使用された方もいらっしゃいますので,飼育者の経験値が大きいところもあるかと思います.
現在のかかりつけの動物病院が車で1時間半,そこからもう1時間半ほどのところにもエキゾチックアニマルに強い動物病院がありましたのでセカンドオピニオンも検討しましたが生体への負担と,通院も加味すると躊躇せざるを得ませんでした.
個人的な考えとしては飼育者とのコミュニティーを通じて少しでも多くの情報を日頃から得ておけば,その分処置の幅は広がるかと思いますので,そういった横のつながりはこの趣味には重要な要素だということを再認識致しました.
3)飼育環境??
上記は立ち上げ直後の環境↑↑
はっきり言って飼育環境には絶対の自信がありました.
水張で水温も30℃程度,ホットスポットは45℃~50℃,ケージ内温度も35℃と高温でしっかり代謝を上げれるようにし,陰にあたる流木のあたりは30℃程度になるようにホットスポットから離して温度勾配もしっかりつけました.
夜間についても30℃を下回らないようにし,とにかく冷えないように細心の注意は払っていました.
これでもしダメなら飼育温度が高すぎて消耗したのか??とも考えられますが,実際に似たような環境で立ち上げ切ったかたもいらっしゃるので,決して間違いではないはずなのですが…
次回も同様な案件があっても恐らく飼育環境については同様な方法で行うかと思いますが.
□今後はどうすれば良いのか?
1)生体の状態はしっかり確認する
「何を当たり前のことを!!!」
おっしゃる通りだと思います.
ただ,私の様に地方在住のものからすると関東での入荷は非常に魅力的に思えてなりません.
まだ爬虫類の発送が取扱業を持っていなくとも可能であった時から何度も陸路・空輸にて生体を購入してきました.
現在は取扱業を取得しており,購入の多くは発送によるものが多いのも現状です.
反省点としては完全に驕りでしょうか…
何度も生体の立ち上げを成功させてきた自身はありましたが,結果今回の生体を死なせてしまったことは自身の驕りでしかないので,今後はもっと生体の状態や,画像,可能であれば動画なども見させてもらうなど購入前の情報をもっと得ておきたいと思います.
人気種などは即完売してしまいますが…
そして基本的には生体を目視で確認したうえでの購入…ですね.
当たり前のことなのですが,私の様に中途半端に経験だけある人間はそんな当たり前のことを疎かにしてしまうこともあるのかもしれません.
2)異常を感じたらまずは専門機関へ!!
今回は飼育開始時より呼吸状態やすぐに目を瞑ってしまうなどすぐに異常があることに気づいてはいましたが,度重なる輸送のストレス下の中で,更に動物病院での検査が重なれば生体が持たないのではないかと自己判断したことも失敗だったと感じています.
症状が進行する前に抗生剤の投与を行えていればもしかすると…
とは思わずにはいられません.
そして,かかりつけの爬虫類を診てもらえる動物病院は2つ以上確保しておいてもいいかもしれません.
昨今は爬虫類の飼育が以前よりも活況になってきたとはいえ,やはりまだまだマイナーな趣味.
まして研究機関も限られていますので,そういった知見も獣医師の先生でもばらつきがあるのかもしれません.
2人以上の爬虫類を診れる先生に診てもらえていれば,もしかすると違う治療法があったのではないか…
3)栄養価の高いエサを与える
これもあくまで自論にはなりますが,立ち上げの際には消化器系の異常がない場合はしっかり保温した後,ピンクマウスなどの栄養価の高い給餌で一気に立ち上げる方が良かったのではとも考えています.
11月の輸送でしたし,到着時に結構お腹が膨れていたので,もしかすると給餌後に発送した??と思ったので消化不全も考えコオロギ・デュビアなどの昆虫を中心に給餌し,最後までほとんどピンクマウスは与えず仕舞いです.
無事に立ち上げた方はやはりピンクマウスをしっかり与えていらしたので,輸送後の生体は排泄を確認できれば栄養価の高いエサを与えた方が良いのかもしれません.
ただし,ある程度状態が落ち着けば昆虫を中心とした給餌に切り替えても良いかと思います.
また,長期的に昆虫のみでの飼育はミネラルやビタミン不足が問題となりますので,ビタミンD3以外のサプリメントも必須となります.
過剰摂取は注意ですが.
4)放置!!
病気もそうだったのですが,理由のところでも一番に持ってきましたが,個人的には最もこれがいけなかったかなと思っています.
状態の改善が思わしくなく,口腔内の洗浄と痰の除去などやり過ぎたのかも…
結果的に鼻腔の膿が最後まで減らずにむしろ増えていったので結果的にマウスロットも併発した可能性も…
先生は違うよとは言ってくれましたが…
飼育開始時から1-2週で環境を整えて,しっかりエサを与え一気に立ち上げて放置しておく…そのくらいが丁度よかったのかもしれませんね.
下手に処置を続けて,結果として過度のストレスにより徐々に体力も奪われていった…そういった可能性も除外できません.
これは猛省です.
■まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回はあくまで自験例ではありますが,生体の立ち上げに失敗した事について自己考察も踏まえてまとめました.
正直まだしてあげられる事はあったと思いますし,自信過剰であった事も,生体の管理面からも反省する部分は多かったと思います.
私は獣医師ではありませんし,最終的な死因はなんだったのか?そういった研究機関へ依頼し徹底して調べることも可能ですが,労力的にもそして小さい体で頑張ってくれた生体の為にも,このまま静かに眠らせてあげたいといった気持ちの方が結果として大きかったので火葬にて供養致しました.
今回の経過と立ち上げられなかった理由や,こうしたらよかったのではないかという自己考察は,同じような境遇で悩まれている飼育者の方への情報提供として,ある意味でリアルかつ価値のあるものではないかと考えています.
最後に立ち上げ切れなかった生体の冥福を祈るとともに,今までに亡くしてしまった生体達の死を無駄にしないためにも日々の研鑽を怠らないよう胸に刻みます.