【51Base】です.
【エメラルドツリーボアの飼育・飼育環境】
その美しいグリーンの体色と,白いイナズマの様なライン.顔は全ての生物を睨みつけるかのような悪人面(いい意味で).
多くの爬虫類の中でも独特かつ神秘的な雰囲気を醸し出している樹上棲パイソン・ボア.
そして多くの飼育者の飼育環境がまたオシャレ…。(個人的なイメージです)
しかし,性格は神経質なものが多く,決して初心者向けとは言わないまさにマニア垂涎の一種.
最近では国内CBも出回りますます目にする機会の増えた本種.
今回はそんな非常に魅力的な樹上棲パイソン・ボアの一種,エメラルドツリーボアについてまとめていきます.
【内容】
1.エメラルドツリーボアとは
■分類
■生息域
■大きさ・価格
2.飼育環境
■飼育ケージ
■温度・湿度
■床材
3.エサ
■幼体時
■成体時
4.ハンドリング・慣れる?
5.まとめ
目次
1.エメラルドツリーボアとは
■分類
爬虫網有鱗目ヘビ亜目ボア科ツリーボア属
参照:Wikipedia
私の知る限り亜種は存在しませんが,生息域によって微妙に大きさやカラーリングが異なるようです.
アマゾン川流域の個体群が比較的温和かつ大型化し,ペルーなどの高山地産のものは比較的濃いグリーンをしています.
背部の白色のバンドも南米の北部を中心と個体群では散らばったラインをとるといわれ,大型のアマゾン流域の個体群は連なったラインをとると言われています.
個人的には産地別に飼育したことはないので個体差かと感じていますし,海外では各生息地ごとのハイブリッド個体のようなものもいるといった話も聞いたことがありますが,真相は不明です.
ただ,グリーンパイソンほど産地別で変化があるほどではないといった印象です.
■グリーンパイソンの飼育・飼育環境
■生息域
コロンビア・ブラジル・エクアドル・ベネズエラ・ペルーなどの南米に広く分布しています.
アマゾン川流域の個体群とペルーなどの高地の熱帯雨林に生息する種とでは違いがあるようです.
一般的に出回る個体群としては南米北部に生息するタイプのものが多いとされています.
■大きさ・価格
平均全長:1.8m
最大全長:2.8m
(アマゾン川流域の個体群で大型化する)
概ね飼育生体で2mまで成長することは稀かと思われます.
また,独特なコイル状で流木の上などに巻きついていることがほとんどなので思っている以上に小さく感じるかもしれませんが,頭部は非常に大きいので迫力はかなりあるかと思います.
本種はCITESⅡ類に分類され,特にブラジルからの輸出は禁止されていますので日本に入荷する生体は海外でブリーダーが繁殖した生体が少数出回る程度で,あまり流通がありませんでした.
ですが最近は徐々にではありますが,繁殖も軌道に乗ってきたようで,国内CBもちらほら見かけるようになりました.
価格についても以前ほど高価ではなく安い生体で10万円程,国内CB個体で20万程度でしょうか.
樹上棲のパイソン・ボアはかなり神経質なものが多いので,可能であればWC個体よりFHかCB,もしくは飼い込みの個体が良いかもしれません.
また本種は卵胎生ですので,卵でなくベビーの状態で産まれます.
2.飼育環境
■飼育ケージ
樹上棲のボア・パイソンには高さのあるケージが必須です.
生涯のほとんどを樹上にて過ごし,また樹上は捕食者から身を隠すのにも適しています.
最終的には最低でも60cm程度の高さは欲しいところかと思います.
上記のサイズで何とか終生飼育は可能ですが,もう少し大きいサイズを用意できれば理想的です.
*ただこれ無茶苦茶重たいです…
また,高さのあるケージはなかなか既製品ではありませんので,自作ケージなども作製できると飼育の幅がより広がります.
■爬虫類ケージについて
本種は夜行性で日中はその独特なとぐろを巻いてジッとしています.
ですが,夜間は思っている以上に活発で,とぐろを巻いているときは小さく見えても思っている以上に大きかったなんてこともありますので,やはりケージサイズはある程度ほしいところです.
また,大きいケージは温度勾配をつけやすいといったメリットもあります.
■温度・湿度
南米のアマゾン川流域や南米北部地方の熱帯雨林に生息しているため,基本的には高温多湿の環境です.
とくに樹上性のボア・パイソンは湿度管理が重要で,大きいケージ,もしくは高さのあるケージではなかなか湿度を保つことが困難なことが多いです.
一部屋を爬虫類の飼育部屋として利用しているのであればその部屋全体を加湿し,1日に数回霧吹きをするだけでもある程度は湿度は保てますが,そうでない場合はミストを使用するか,大きなケージにしてその中に加湿器を入れてしまうといった方法もありだと思います.
また,ドリップ式のものを用いても良いのですが,流量を気を付けないとケージ内が水浸しになることもありますので注意が必要です.
ドリップ下に水容器など入れておくといいかと思います.
本種を始めとする樹上棲パイソンは割と病気にかかりやすい印象があります.
■爬虫類の突然死について
高湿度な環境を維持するためにはどうしても通気性を犠牲にしてしまいがちですが,細菌類の発生を助長してしまいますので必ず通気性は持たせるようにしましょう.
温度についてはグリーンパイソンなどと同様で構いませんが,必ずホットスポットと涼しい場所とで温度勾配を持たせるようにします.
その際に流木を上部・中部・下部と設置しておけば,生体が好みの温度帯で休むことが出来るのでおすすめです.
特に夏場など,ケージ内温度が上がりすぎないように注意しましょう.
■爬虫類の暑さ対策
■床材
ヘビの飼育だけでなく爬虫類の飼育で割と頭を悩ますのがこの床材かと思います.
私はヘビの飼育にはペットシーツが最も適したものだと思っていますが(シシバナヘビやサンドボアなど除く),樹上棲のボア・パイソンについては湿度を維持できないため決しておすすめはできないかと思っています.
床材として選択されるものとしては
・ウッドチップ
・ヤシガラ土
・水苔
・水
ウッドチップやヤシガラ土は水分を含み湿度維持を担う床材です.糞や尿酸のある部位だけ取り除けば良いのでメンテナンス面でもメリットがあります.
ただし,月に1回はケージ内のウッドチップとヤシガラ土の入れ換えが必要です.
水苔はより水分を含む為より高湿度を維持することが可能ですが糞の処理などの管理が割と大変です.
また,飼育者の中では全面に水を張って飼育している方もいらっしゃいますね.
私はいつも半分はウッドチップ,もう半分は大きめの水容器に水を張るようにしています.
種にもよりますが水容器内に排泄をするものもおります.
(たまたま水容器にしているのかもしれませんが…)
3.エサ
■幼体時
樹上棲のボア・パイソンは主に鳥類を獲物にしていることが多いので,飼育開始時にマウスなどのげっ歯類に餌付きにくいものも少なくありません.
まずは購入前にマウスに餌付いているかどうかを確認された方が無難です.
鳥類は冷凍ヒナウズラが餌用として売られていますが,その次のサイズがヒヨコサイズとエサの大きさが限られてしまいますのでできればマウスをメインとしたいところです.
もしも餌付いていなかったりした場合は焦らずまずは環境になれてもらい,そこからヒナウズラの血や毛をマウスに付けるなどして餌付けていきましょう.
個人的には解凍時に同じタッパーなど入れてやればよく臭いが移ると思っています.
頻度については概ね週に2-3回程度で良いと考えますが,私は幼体に対しては4日に1回のペースで与えています.
2-3日置きに与えても良いのですが,便や尿酸の状態などを見ながらエサの頻度については検討してください.
■成体時
生体まで育て上げられた方のほとんどはマウスもしくはラットへの移行が完了している方がほとんどかと思います.
ですがほとんど見かけなくなった印象ですが過去にWC個体ではげっ歯類に全く興味を示さないものもいましたので,購入前に餌付け済みかは確認されたほうが良いと思います.
そして,私自身は経験がないのですが,成体になるとヒヨコも呑めるサイズになるので時折マウスやラットの他にヒヨコ・親ウズラなどを与えることがあるかと思います.
全ての生体ではないのですが,中にはその後全くげっ歯類に興味を示さなくなる生体もいるといった話を時々聞きます.
そんなグルメ?な個体がいるのか?と耳を疑ったことがありますが,私の知り合いでも過去に同様の事例があったので決して都市伝説的な話ではないのかもしれません.
可能であれば終生げっ歯類での飼育が理想的かとは考えています.
ヒヨコ・親ウズラをメインとして与えることも良いのでしょうが,マウス・ラットがヘビ飼育の栄養素としては申し分ないようですので無理に鳥類にサプリメントを添加するよりはげっ歯類を中心としても良いのではないかと考えます.
■コチラのサイトでヘビの栄養学について非常に詳しく記載されています.一読を強くお勧め致します.
4.ハンドリング・慣れる?
ハンドリングに関しては正直なところ
「悪いことは言わない.やめておけ…」
といつも心の中では思っています(笑)
エメラルドツリーボアに噛まれたことはありませんが,下記のツイートにあるように牙が凄いです.
どんな生き物でも口がある限り噛まれることはありますが,正直エメラルドツリーボアについては本気で噛まれたくないです.
まだモルカンかグリーンパイソンの方がましな気がしないこともないような気も…。
ハルマヘラやタニンバーなんかも痛そうですが,アメジストコンプレックスよりもやはりエメラルドツリーボアに関しては頭一つ抜き出ている印象です.
また,慣れるか慣れないかについては捉え方次第だといつも考えています.
環境に慣れれば飼育者がケージを開けるなり,ケージ前に来ればエサかと思い顔を近づけてくることもあります.
本種についてはこれが慣れる限界なのではと考えています.
海外サイトなどでエメラルドツリーボアをハンドリングし,キスをしている画像などを見たことがありますが,あれは長い期間を掛けて生体との信頼関係を築き,そしてたまたま大人しい生体だったからなんだと個人的には思う様にしています.
いずれにしても本種を含む樹上棲のボア・パイソンについては観賞をメインに飼育される方がお互いにとって良いのではないでしょうか.
5.まとめ
いかがでしたでしょうか.
【エメラルドツリーボアの飼育・飼育環境】
独特な魅力を持つ本種ですが,神経質かつ牙が鋭く取り扱いには非常に神経を使います.
いわゆる抱き蛇としての要素はほぼ皆無の様な生体ですが,その見るものを魅了する美しい姿は,爬虫類好きの誰もが憧れる存在ではないでしょうか.
決して初心者がいきなり飼育できるようなヘビではないかと考えますが,間違いなく樹上棲のボア・パイソンの最高峰だと思っています.
**生き物を飼育することの是非はここでは問いません.また,本記事は飼育を促進するためものではありません.
生き物を飼育することは命を預かることです.その生体を最後まで責任を持って飼育することが飼育者の義務です.飼えなくなったという理由で逃がしたりすることは絶対にやめましょう