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【キボシイシガメの飼育・飼育環境】
特徴的な黒の甲羅に点在する斑点.
比較的小さく,飼育も容易な本種ですが,多くの方はまだ名前すら聞いたこともないかと…
ですが,爬虫類が好きな方にとっては非常にポピュラーな種で,北米産ということもあり,冬期は冬眠しますので,日本の環境には比較的適応しやすい種です.
昨今はCB化が進み,国内での繁殖例も多く聞かれるようになってきました.
今回はそんな【キボシイシガメ】について生態と飼育についてまとめていきます.
目次
1.キボシイシガメとは?
■分類
参照:Wikipedia
爬虫網カメ目ヌマガメ科キボシイシガメ属
学名:Clemmys guttata
英名:Spotted turtle
和名:キボシイシガメ
現在はモリイシガメ・ブチイシガメ・ミューレンバーグイシガメを含めた4種によって構成されています.
■生息域
参照:Wikipedia
アメリカ合衆国東部・カナダ南東の一部分(オンタリオ州南部)
カナダのケベック州南西部でも生息が確認されていましたが,現在は絶滅したと言われています.
自然界では浅い水場を好み,浅い湿地や森,平原に囲まれた水場などに好んで生息します.
■大きさ・価格・寿命
甲長:4cm~12.5cm
最大甲長14.3cm
価格:20,000円~40,000円
寿命:20年~40年
キボシイシガメはペットとして普及しているカメの中では最小クラスで,成長しても14cm程にしかなりません.
オスよりはメスのほうが大きく,オスは最大12cm程度で成長が止まります.
また, カナダの個体群の方がやや大型化する傾向があります.
基本的に性格は大人しく食欲旺盛で,飼育に向いていると言えます.
ただし,個体差が大きいため多頭飼いは非推奨で,本種は比較的ストレスに弱いとされるので,飼育の際は注意が必要です.
キボシイシガメの価格帯は,現在では20000~40000円程度となっています.
性別や成長度合いによって異なり,性別不明の幼生体~若い個体で20000円前後,性別確定の個体で40000円前後の価格が一般的です.
また,キボシイシガメ最大の特徴とも言える甲羅のスポットの入り方によっても価格が異なり,特にスポットが30カ所以上に見られる個体はハイスポットと呼ばれ,人気が高く,価格も高くなる傾向にあります.
■絶滅危惧種?CITESについて
自然界において,キボシイシガメはその数を減らし続けています.
主な原因は,農地開発による棲息地の消失やペット用としての密猟,水質汚染などが挙げられます.また,交通事故やアライグマなどの哺乳類による捕食件数も増えており,生息数はかつての半分以下と言われています.
そのため,キボシイシガメは2013年にCITES Ⅱ類に登録されています.
CITES(通称:ワシントン条約)とは,正式名称を
「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引における条約」
(Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora)
と言い,取引の規制を通じて野生生物種を絶滅から守ることと共に,その持続可能な利用も理念として掲げる条約です.
現在180カ国が加盟しており,登録された動植物の数はおよそ35000種にものぼります.キボシイシガメはその中の一種なのです.
キボシイシガメのワシントン条約内でのランクは
「絶滅危惧IB類(EN)」
とされ,これは条約内で5番目の絶滅危惧度の高さになります.
具体的には,一つ上のIA類程ではありませんが近い将来における野生での絶滅の危険性が高いものとされています.
これにより,キボシイシガメは国際取引をする際,商業目的で輸出するには輸出国の担当部局が発行した輸出許可証が必要となりました.
現在日本で流通しているキボシイシガメの多くがCB個体で,日本で飼育繁殖された個体も多く存在します.
2.飼育環境
■飼育ケージ
キボシイシガメは水場を好む半水棲の亀です.
特に生まれてすぐの頃はほとんど水中で生活し,水からあがるのはバスキングの時ぐらいです.
成長するにつれて陸棲の傾向は強くなるものの,餌のほとんどは水場で捕食し,水棲の傾向が強い種です.
そのため,キボシイシガメの飼育ケージとして多くの飼育者でガラス水槽を使用されており,ブリーダーなどで多くの生体を飼育されている方などはプラケース,衣装ケースなどを使用されています.
水槽については,アクリル製のものより透明度が高い熱帯魚用のガラス水槽がおすすめです.
特にオールガラスの水槽は見た目的も非常にスタイリッシュでレイアウトも無茶苦茶オシャレに彩れますのでおススメです.
幼体のときはプラスチックの衣装ケースで十分事足りますが,成長の度合いによって水槽に引っ越し,60~120cm程度のサイズのものを用意できるとよいでしょう.
本種は半水棲のカメですので,水槽の中には,必ず水場と陸場を用意しましょう.
水場は,幼体のときは甲長の倍くらいの量の水で十分です.
少なく見えるかもしれませんがベビーの生体で時折,ひっくり返ったまま起き上がれず溺れるという事故を散見しますので,水は最小限にとどめておいたほうが無難だと考えます.
また,キボシイシガメを飼育するにあたって水質の管理は特に重要です.
カメは水を汚しやすい生き物ですが,幼体は水質が悪いと皮膚病を引き起こし,最悪死に至りますので,プラスチックケースで飼育する場合はこまめに水を換えるよう心がけましょう.
水質を維持するには外部フィルターなどの
「濾過能力が高いフィルター」
の利用がおすすめです.
陸場については、後述の紫外線の項目で詳しく記します.
■温度・湿度
キボシイシガメが生息する地域は,日本と同じように四季があり,一年の寒暖差が厳しいことで知られています.
その気温差は-6℃~28℃程で,暑さにはあまり強くない一方,寒さには強いことが見てとれます.
また,一年を通して雨量が多いことも特徴の一つで,湿地帯など湿度の高い場所を好むキボシイシガメにとって、一定の湿度はかかせません.
スポット | 温度・湿度 |
バスキングスポット | 32-35℃ |
ケージ内温度 | 28℃前後 |
夜間温度 | 26℃前後 |
水温 | 25-28℃ |
湿度 | 60%程度(雨季は70%以上) |
■日本での越冬について
通常,キボシイシガメは冬季には冬眠をして過ごします.
飼育環境下で冬眠させることも可能ですが,個人的に本種の冬眠を経験したことがないので詳しくは割愛させていただきます.
長期飼育や繁殖を視野に入れるのであれば冬眠は必須ですが,ベビーの飼育においては初めは年中加温されることをおすすめ致します.
日本の冬を越させるためには,ヒーターを使うことでの温度管理が必要となり,ヒーターは熱帯魚用のものを活用できますが,特に寒い時期は水の蒸発が早くなるので,毎日の水換えがかかせません.
また,幼体の場合は水温を28℃前後と高めに設定し,新陳代謝を促すとよいでしょう.
■紫外線
日光浴が大好きなキボシイシガメには,陸場にバスキングライトと紫外線を含んだUVライトの二つは必須です.
バスキングライトには体を温める効果があり,消化促進にも重要な要素ですので必ず設けるとともにしっかりと局所的に温度を上げるようにしてください.
UVライトは浴びることで体内でビタミンD3を生成する効果があり,カルシウムの吸収に役立ちます(UVBに限る).
特にカメにとってカルシウム不足は大敵で,足腰が弱くなるクル病や甲羅の形成不具合など多くの病気の原因となります.
キボシイシガメがゆっくり日光浴を楽しめるよう,最適な環境の陸場を設けましょう.
■爬虫類の紫外線について
3.エサ
■幼体時
キボシイシガメは肉食傾向が強いものの,自然界では水生植物なども食べる雑食性の生き物です.
体を大きくしたい幼体時には,冷凍赤虫がおすすめですし,それに合わせてカメプロスやレプトミンなどの配合飼料も与えると,栄養バランスをとりやすく後の偏食も防げるでしょう.
特に屋内飼育の場合は,カルシウムと一緒にその吸収を助けるビタミンD3の入った飼料を選ぶことをおすすめします.
■成体時
成体時でも,基本的な餌は配合飼料で十分です.
その他には,小魚やペット用の昆虫,鶏肉やフルーツなどなんでも食べまが,与えすぎは偏食となる事と容易に肥満体となり兼ねませんので,きっかけとなる場合もあるので,注意が必要です.
餌やりの頻度は一日に一度を目安にし、一度に与える量が多すぎないよう注意してください.
4.慣れる?ハンドリング
基本的に臆病と言われるキボシイシガメですが,CBベビーを飼い込めば飼い主を認識し,水槽に近づくだけで餌を求めてアピールしてきます.
慣れるまで時間はかかりますが,焦ってかまいすぎるとストレスを与えてしまうので注意が必要です.
飼い主に慣れてきた目安の一つとして,バスキングがあります.
飼育開始後すぐはリラックスしたバスキング姿をなかなか見せてくれませんが,そこが居心地の良い場所と分かれば日光浴する姿を見せてくれるでしょうし,非常に癒されるので心待ちにしたいです.
5.まとめ
いかがでしたでしょうか.
【キボシイシガメの飼育・飼育環境】
爬虫類飼育者には比較的ポピュラーな本種ですが,まだまだ知名度は低いには低いのですが,北米産で非常に飼育がしやすく環境にも適応しやすいと考えています.
甲羅の美しい斑点模様と小さな体が可愛く思えるキボシイシガメは飼育者が増えてきている一方で,自然界では絶滅を危惧される種でもあります.
そのことを念頭に,家に迎える際は最適な環境を整え,素敵な生涯を過ごせるよう心がけてあげてください.
**生き物を飼育することの是非はここでは問いません.また,本記事は飼育を促進するためものではありません.
生き物を飼育することは命を預かることです.その生体を最後まで責任を持って飼育することが飼育者の義務です.飼えなくなったという理由で逃がしたりすることは絶対にやめましょう