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【アカアシガメの飼育・飼育環境】
この記事を読まれている方は本種の事をある程度知っている,もしくは知ったために調べている方がほとんどだと思います.
実は入荷は割とあるため,ポピュラーといえばポピュラーなリクガメなのですが,どうしても一部の生体に人気が集中しているため知名度は低い本種.
ですが,その特徴的な前足の色,そして頭部が赤く染まるものは非常に迫力があります.
今回はそんな少しマニアックなアカアシガメについてまとめていきます.
1.アカアシガメとは
■分類
爬虫網カメ目リクガメ科ナンベイリクガメ属
学名:Chelonoidis carbonarius
英名:Red-footed tortois
和名:アカアシガメ
亜種は現在のところ細分化されてはいませんが,産地ごとに個体群として分けられる傾向にあるようです.
この辺りは他の爬虫類でも細分化される傾向にあります.
ブラジルやボリビアに生息する生体が比較的大型になりますが,本邦には厳密なインボイスで入荷されることは稀です.
■生息域
中南米.アルゼンチン北部,パナマ南東部,ボリビア,ブラジル東部などに自然分布.
先の項でも述べた通り,地域別の個体群が確認されており,北部・ボリビア・ブラジル・アルゼンチンと4つに個体群は細分化されています.
また,ハイチ・ジャマイカ・ドミニカ共和国に人為的に移入されており,生息域は比較的広い.
本種と同属のキアシガメと生息域が重なっていますが,外観を見るだけで見分けは容易につきます.
■大きさ・価格
甲長20cm~40cm
最大甲長50cm
(雌雄により最大甲長は異なる)
背甲はドーム状になっていますが,成長に伴い中心部がくびれてくるため, 上から見ると細長いひょうたんのような形にもみえます.
オスのほうがメスよりもくびれやすい傾向にあり,オスの尾はメスに比べて,幅が広く長くなる傾向にあります.
野生のものでは甲長が51cm以上のものが確認されいますが ,飼育下で甲長が50cm近くにまで成長することは少なく,概ね35cm~40cm程度で成長が止まる傾向にあります.
ただ,これは飼育環境に左右されますので一概には言えませんが…
生体 | 価格 |
ベビー | 30000~40000円 |
ヤング~アダルト | 40000~50000円 |
チェリーヘッド |
50000~70000円 (ベビーはもう少し安価) |
ベビーの入荷も良くありますので概ね30000~40000円程で購入は可能.
以前は10000円前後で取引されていた時期もあったと記憶していますが…
2.飼育環境
■飼育ケージ
幼体のうちは45~60cmほどのサイズの水槽などを飼育ケースにすると十分ですが ,成長すると甲長が50cm近く(飼育下では30~40cm)にまで大きくなるため,最終的には90cm~120cmほどのケージが必要となります.
基本的には完全地表棲ですので,高さは必要ないのでグラステラリウムの6030や9030あたりは非常に重宝します.
また,上部蓋も無理に必要ないので自作ケージという方法もありますので,検討されている方はぜひ参考にされてみてください.
■爬虫類の自作ケージ
■簡単に製作可能な自作ケージ
初めての飼育なら,途中で買い換えるよりはじめから大きめのサイズを選ぶほうが無難といえます.
ただし,広いケージになればなるほど,冬の電気代は跳ね上がりますので覚悟は必要です.
■爬虫類飼育における電気代について
水槽タイプでも飼育可能ですが,横からも手を入れることができる爬虫類用のケージを使うことで,お世話のときに彼らを驚かさないで済みます.
スポット | 温・湿度 |
ホットスポット | 35℃以上 |
ケージ内温度 | 28-30℃ |
クールスポット | 25℃程度 |
湿度 | 60-80% |
アカアシガメの生息地域はほぼ熱帯地域に属しており,基本的には高温多湿の地域です.
生息域分布が広いため,熱帯雨林気候・熱帯性気候・亜熱帯性気候・熱帯モンスーン気候・ 半砂漠型サバナ気候,温帯夏雨気候・高地の亜熱帯性気候・温暖湿潤気候とそれぞれ異なる温・湿度という環境下で生息しています.
ですが,飼育下では概ね上記の温度管理で問題はありません.
生息地域の年間平均気温はせ18度~27度ですが,雨が続いたりしたときや乾季などはかなり気温が下がります.
アカアシガメは20度以下になると体温調節が困難になるため,気温が下がりにくくやや湿度の高いサバンナやその周囲の森林や草原での生活を好みます.
18度を下回ると体調を崩すこともあるので,飼育するケージ内の温度は25度~30度に設定します.
温度管理には暖突やパネルヒーターをサーモスタットでしっかりと管理するようにしましょう.
多少は低温に強い印象ですが,それでも熱帯地域に生息する種は急激な温度変化には弱い傾向があります.
また乾燥によって体調を崩さないように湿度は60%~80%を保つ必要があります.
霧吹きで水をかけたりケージ内に水をまく,加湿器を使用するなどして,湿度管理も厳密に行ってください.
■爬虫類の湿度管理について
日本での飼育では冬場気温が下がる時期にはヒーターなどを使った温度調節も必要ですが,暖房器具は空気を乾燥させやすいので,特に注意が必要です.
■水容器
ケージ内には,アカアシガメの飲み水用と,体を浸すための水の容器を置く必要があります.
毎日水を交換し,清潔な水を入れるようにしてください.
容器の大きさは全身が入るほどには深くなくて十分ですが,乾燥防止のためにも体を水に浸せる程度の大きめのサイズを選ぶといいでしょう.
深すぎない容器のほうが楽に出入りできますし,万が一の事故防止にもなります.
(特にベビーのリクガメは水容器内で溺れる事もあります)
アカアシガメは比較的良く水を飲みますので,体を浸す容器とは別に飲み水用の容器を設置する飼育者もいます.
また定期的に温水浴をしてやると体色もキレイに保てますし,割と慣れた生体は好むものもいますので,ケージから出してぬるま湯につけてあげるのも良いかと思います.
温度・湿度が高いとカビの発生原因になりますので,水の容器だけでなくケージ内の掃除も定期的に行うことをおすすめします.
■紫外線
太陽光には熱作用のある赤外線のほか,殺菌や新陳代謝促進などの有効な化学作用のある紫外線があります.
紫外線UVAには食欲増進効果や脱皮を促進する効果などがあり,紫外線UVBにはビタミンD3の合成やカルシウムの代謝を促進する効果があります.
カルシウムの吸収にはビタミンD3が必要不可欠です.
アカアシガメなどの昼行性の爬虫類の大部分は日中に日光浴をして体を温めますが,同時にビタミンD3の生成も行っています.
昼行性の爬虫類の,特に甲羅の成長等で紫外線の要求度が高いと言われるリクガメは,健康維持のためにUVBランプは必須です.
このUVBは窓ガラスを透過できないため,ケージ内に爬虫類用蛍光灯などのUVB発光ランプを設置します.
蛍光灯式のものは時代の流れからか減少傾向にありますが,紫外線量はスパイラル式のものより強いと言われており,個人的にも重宝しています.
ZOOMED社とポゴナクラブのものを使用することが多いです.
また,最近ではセルフバラスト水銀灯も多く発売されていますので,バスキングスポットと紫外線と1つで2つの役割を担ってくれますので,非常に重宝するかと思います.
爬虫類の紫外線については下記の記事にて詳しく解説しています.
■爬虫類の紫外線について
3.エサ
幼体時・・・1日2-3回
成体時・・・1日1回程度
アカアシガメは他のカメと同じように繊維質の豊富な野菜や果物,動物の死骸や昆虫なども食べますし,人工飼料にも比較的餌付きやすいです.
リクガメ用の人工飼料のほか,にんじん,ピーマン,トマト,青梗菜,小松菜などの野菜やバナナ,りんご,いちごなどの果物も与えてください.
また,さつまいもやかぼちゃなどの芋類も好みますので,餌の中に入れてやると積極的に食べている様子が観察できるかと思います.
その他に,コオロギやワーム類,デュビアなどの昆虫や鶏肉を与えると食事の栄養バランスをとることができますが,あくまで補助的に時折与える程度にしましょう.
幼体のうちは,野菜など植物性の餌を中心に与えます.
人工飼料については現在多くの物が発売されていますが,それのみを与えるのではなく,野菜
や果実などに混ぜて与えるとより効果的かと考えています.
4.ハンドリング・慣れる?
爬虫類は基本的に人と触れ合う事を好みません.
どちらかと言えば「エサをくれる対象」としてしか認識していないと思っています.
ケージ内の掃除をする際や,外に出して温水浴させるときなどはできるだけストレスを与えないように,下からすくい上げるように持ち,ハンドリングしてください.
飼い主さんのハンドリングや餌やりに慣れたり,声に反応することはあっても,犬や猫のようにすり寄って来たり,呼んだら飼い主さんのもとにくるなどの懐き方はないと考えていいでしょう.
特に購入直後は輸送や新しい環境への変化など,非常に強いストレス下に置かれていますので,可能な限りベタベタとハンドリングすることは控えるようにしてください.
■爬虫類の購入後にすること
5.まとめ
いかがでしたでしょうか.
【アカアシガメの飼育・飼育環境】
ここではアカアシガメの飼育・飼育環境についてまとめました.
本種は,温度や湿度管理をしっかりと行えば,比較的楽に飼育できるリクガメであるといわれています.
リクガメの一種なので陸地にいることが多く,水棲の独特な臭いもあまり気になりませんし
「優しい性格で美人なカメ」
といわれて人気のある爬虫類です.
しかしペットとはいえ生き物です.
そしてアカアシガメなどのカメ全般にいえることですが,非常に寿命が長いです.
最後まで責任を持って飼育することができるのか,よくお考えになってほしいと思います.
また爬虫類専門の獣医さんが増えてきているとはいえ,急な体調不良など困ったときにすぐ対応してくれる獣医師を見つけておくといいかもしれません.
■爬虫類の突然死について
ペットショップなどで購入する際に,飼育方法以外にも色々な情報を入手しておくことをおすすめします.
■ペットにおすすめのリクガメ
**生き物を飼育することの是非はここでは問いません.また,本記事は飼育を促進するためものではありません.
生き物を飼育することは命を預かることです.その生体を最後まで責任を持って飼育することが飼育者の義務です.飼えなくなったという理由で逃がしたりすることは絶対にやめましょう