【51Base】です.
【ボールパイソンがエサを食べない時に試したいこと】
~ヘビに餌を食べさせる方法~
一般的には忌み嫌われてしまいがちな爬虫類ですが,最近はインターネットやSNS,動画共有サイトにて爬虫類の魅力に取りつかれてしまう方が続出しています.
一昔前は私の様なマニアがひっそり,そしてコソコソと飼育しているような世界でしたが…
(いい意味で)
最近はSNSでもよく質問を受けるようになり,大変光栄に思うとともに身の引き締まる思いです.
そんな中でよく聞かれる内容としては
「飼育を始めたばかりのボールパイソンがエサを食べない」
今回は購入後にエサを食べないボールパイソンに焦点を当ててまとめていきたいと思います.
*私が行ってきたことを中心にまとめています.必ずこの方法で食べるといったわけではなくあくまで一つの方法として考えていただければ幸いです.
目次
1.ボールパイソンはなぜ拒食をするのか
まずはなぜ拒食をするのかについて自己考察していきましょう.
拒食の原因として考えられるのは
・ケージ内温度
・輸送によるストレス
・外的因子
・脱皮前
・季節性の拒食
・エサの品質
・生体の性格
などがあるでしょうか.
また,ボールパイソンは初心者向けのヘビであるとよく言われていますが,本種は拒食をよくします.
彼らは水さえあれば半年くらいであれば食事を摂らなくても大丈夫ではありますが,その食べない状態が正常なものか,それとも異常なものかについて少し観察が必要かと思います.
拒食については下記の記事にてご確認ください.
■ボールパイソンの拒食について
飼育開始の初日から食べる生体はそこまで多くはありませんので,焦らず原因について考えていきましょう.
2.拒食時に試したいこと
■エサ
・温度
マウス・ラットの体温は変動しやすいと言われますが,概ね38℃程度と言われています.
ですので給餌の際は
「与える際は手で触って温かく感じる程度」
とはよく言われています.
ですが実際は
「マウスを素手で触りたくない」
といった方が多いようです.
(私自身も巨大なラットは臭いが独特なのであまり素手で触りたいとは思いません)
素手で触ることについての是非はここでは触れませんが,私はいつもグローブを使用してはいます.
そして,解凍方法については飼育者によって様々でしょうが,与える前にドライヤーかホットスポット下で少し温めてから与えてもよいかと思います.
ボールパイソンではありませんが,私が飼育しているインランドカーペットパイソンは給餌前にしっかりと温めたラットでないと全く食い付こうとしません.
ですので与える前にエサの温度についてはしっかりチェックしてもよいかと思います.
サーモガンをしようしても良いかもしれませんね.
・匂い
匂いも非常に需要な要素です.
ボールパイソンはピット器官で小動物の熱を感知し,ヤコブソン器官で臭い分子を分析します.
ですのでエサの匂いに非常に敏感に反応します.
他の生体に給餌している際にもイソイソとシェルターから出てきてエサの出待ちをする者もいます.
他の生体に給餌中. …もしかして待ってる?ww
— 長州クリプター【Reptiles Room】 (@choshucrypter) November 9, 2018
パイソンにはない可愛らしさがありますね^_^;#爬虫類好きと繋がりたい #ブラックテールクリボー pic.twitter.com/OQMZFvjRuN
解凍する際に湯煎をされる方も多いと思いますが,お湯でマウス・ラットの匂いが軽減しますので,可能であればパックなどに入れて濡れないようにすると良いと思います.
またその際にマウスとラットを混ぜてしまうと食べないものもいますのでマウスはマウス,ラットはラットで分けるようにしましょう.
また血の匂いに敏感なものもいますので,鼻先を少し切って出血させてから与えても良いかもしれません.
少し躊躇するかと思いますが,肉食の生き物を飼育する場合に避けては通れない道かと思いますので,心を鬼にして処理してください.
また,生体によってはマウスに全く興味を示さないもの,毛を嫌うものもいます.
「なんてわがままなんだ,そんなことでは自然界では生きていけないぞ」
と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが,ボールパイソンはそのほとんどがCB化による品種改良で,野生のものはFHを除いてほとんどいません.
ですので,飼育下で餌に対してかなり神経質なものがいることも事実です.
どうしてもマウスを食べない場合は
・ピンクマウスを試す
・ピンクラットを試す
・ラットの匂いをマウスにつけて試す
・ヒナウズラを試す
など行われてみてください.
*真意は定かではありませんが,シーチキンの匂いをマウスにつけて与えたら拒食していた生体が食べたとの話を聞いた事がありますが,私自身がしたことがないことと,ソースがないため謎のままです.
・動き
ボールパイソンは狩りの方法も,エサも何もかも教わることなく本能的に備わった状態で生まれてきます.
ですので,給餌の際に少しマウスを動かしてやるとよく反応するものもいます.
ですが,動かし方としては本当にごく僅かで構いません.
ボールパイソンではありませんが、マウスの動かし方を解説しています。
本来ボールパイソンは臆病なヘビですので,激しい動きや急な動作を鼻先でしてしまうと怯えてしまい全くエサに興味を示さなくなるものもいます.
イメージとしてはピンセット鼻先まで持って行き,その場で数ミリ程度動かす程度です.
もしくは少し離れた場所で左右に1㎝程度動かしてみたりなど,若干のモーションをつけてあげるだけで舌を出して反応するものもいます.
与える前にマウスの鼻先で胴体部分などをごくごく軽く「チョンチョン」と触れてやると一気にやる気モードに入るものもいます.
ただし,怯えているようなら無理せずにエサを近くに置いておきましょう.
・置き餌
食べない場合は置き餌を必ず試しましょう.
最近はSNSなどでべた慣れのトカゲやヘビなどを見る機会が増え,手から食べてもらうことが当たり前のようになってはいますが,実際には恐らく半数くらいは初回は置き餌で与えている方がいらっしゃるとは思います.
私自身も購入後の初給餌は少し反応を見て無理そうならすぐに置き餌に切り替えています.
とにかく最初は環境に慣れてもらうことが先決ですので焦らずダメなら置き餌でまずは食べてもらいましょう.
置き餌をする際も出来れば容器の上にあった方がよいと思います.
これは私の経験ですので立証されたものではありませんが
・黒い容器
・淵が浅い
・プラ容器
で与えた際に拒食している生体が食べた事が多いです.
入れる容器は少し大きめの蓋で良いと思います.
理由はよくわかりませんが,他の容器よりなぜか成功率が高い気がしますのであくまで参考までに.
かなり昔の写真ですが,ベーレンパイソンの立ち上げの際に上記の方法で置き餌に成功した時です.
かなりうれしかったですね…
・活き餌
個人的には成功した試しがないので何とも言えませんが,実際に行われている方もいます.
ボールパイソンは臆病なヘビだという事はお伝えいたしましたが,ベビーはその傾向が特に強いです.
そして食べない生体は恐らくはその中でもより臆病なものだと考えています.
そんな生体に生きたマウスを与えるとどうなるかはご想像の通りかと思います.
怯えて丸くなるかと思われます.
私も何度か経験がありますが,食べない生体で活き餌は食べたものはいませんでした.
あくまで最終手段として考えても良いかもしれません.
また,ボールパイソンのベビーに活き餌を与える場合は必ずピンクマウスかファジーサイズくらいにはしておきましょう.
生体が反撃されて思わぬケガを負ってしまう危険があります.
■飼育環境
・ケージ
ケージで考えることとしては
・ケージのサイズ
・ケージの置き場所
まずはサイズですが,ボールパイソンはもともと乾燥した草原の穴や岩陰に隠れて生活しています.
狩りについても基本的には待ち伏せです.
ですので,必ずしも広いケージが良いというわけではありません.
生体でも60㎝程度のケージで十分です.
そしてケージの置き場所ですが,人の行き交いが激しい場所や床は避けた方が良いです.
ヘビは非常に振動に敏感に反応しますので,新しい環境に慣れていない状態では非常に強いストレスとなります.
特に小さなお子様がいらっしゃるご家庭などは注意が必要かと思います.
できれば暗く静かな場所に置くようにしましょう.
・温度
ボールパイソンはアフリカの乾燥した岩場や草原に生息しており,その多くの時間を穴などの巣穴で過ごすと言われています.
暗く・暖かい環境が本種は最も落ち着くものだと考えてもらって良いでしょう.
温度 | |
ホットスポット | 35℃ |
ケージ内温度 | 30~31℃ |
夜間温度 | 25-27℃ |
人間の快適に感じる温度と彼らが快適に感じる温度には大きく差がありますので,しっかりと温めるようにしましょう.
特にホットスポットはしっかりとヒートパネルで温めてください.
また,時折ヒートパネルによる熱傷の事故があるようですが,これだけ多くの飼育者がいらっしゃる中でもそこまで表面化していないところから,器具の不具合等も考えられますので,基本的には下部から温める方法で構わないかと考えています.
その際は必ずケージ外から温めるようにしてください.
本種は乾季の気温が下がる時期は休眠をする傾向にありますので,少しでも温度が低いと途端に食べなくなるものもいますので温度管理だけは少し神経質なくらいで良いです.
*時折,「爬虫類飼いの人は飼育環境に細かすぎる」といった話を聞きますが,変温動物である彼らの多くは自ら体温を上げることが出来ませんので,生命線は私たち飼育者が提供する飼育環境ですので温度・湿度管理は特に厳密にする必要があります.低体温の状態が続けば免疫力低下・消化不全・活動性低下など必ず状態を崩してしまいます.
もしもエサを食べない状態が続くようでしたら,温度を1℃~2℃上げてみると活動性が向上することもありますので,サーモスタットで管理してみてください.
・シェルター
先の項でも記載した通り,本種はもともと臆病な性格で基本的には巣穴などに籠っていることが多いです.
多くのヘビはあまり活動的な生き物ではありませんので,基本的にはシェルター内などでジッとしていることが多いです.
私はヘビを飼育する際は可能な限りシェルターは準備するようにしています.
安心・安全と思えるシェルターがある事によって生体自身が落ち着きますし,ストレスも軽減できるのではと考えています.
□シェルターに籠って生体が見れないからといった理由でシェルターを入れたくない.
□シェルターを入れると臆病な性格になるから.
といった理由で入れない方もいらっしゃいますので,それでしたらせめてケージに暗幕を掛ける,暗くて静かな場所に置くといった配慮はした方が良いかと思います.
シェルターに引き籠っていたとしても,環境に慣れてくれば夜間にイソイソとシェルターから出てきてエサを探し回っていますので,そういった時間にそっと観察することもできます.
■ストレス
・購入後何日?
購入直後,もしくは輸入・入荷間もない時期は非常にストレスの強い状態であると思ってよいかと思います.
その生体がショップに入荷してどのくらいの期間いたのか,またエサはどうやって食べていたのかなども購入前に確認されてください.
そして購入後に自宅に帰ってケージ内に入れた後は基本的には触らずにそっとしておきましょう.
爬虫類イベントや輸入直後の生体などは脱水状態である事もありますので,必ず新鮮な水だけは用意しておきましょう.
その状態で少なくとも2-3日はそっとしておいても問題ありません.
*明らかに痩せ細っている場合.口呼吸やよだれが出ている,呼吸状態が思わしくないなど何か疾患を疑わせるような場合は速やかに動物病院へ連れていきましょう.
■ヘビの飼育開始時にすること
個人的にはボールパイソンは3-5日は必ず開けるようにはしています.
ケージに入れてすぐに水を飲む,夜間にウロウロしているなど見られれば3日目には与えることもありますが,とにかく焦らないことが大切だと思います.
・ハンドリング
購入後に自宅に帰ってから早速,生体を取り出してハンドリングをしたいかと思いますが,可能な限り短時間に留めそっとケージに入れてあげましょう.
ケージに入れてからシェルターに入っていくようでしたら無理に取り出したりなどせずにそのままそっとしておきましょう.
基本的にヘビはハンドリングをして喜ぶ生き物ではありません.
動物園などで大きなニシキヘビと触れ合ったりするコーナーなどありますが,触ってもらって喜んでいるというよりは我慢している,気にしていないと思ってもらってよいかと思います.
モニターやイグアナなどは積極的にハンドリングをすることによって人間に持たれることに慣れるものも居ます.
ですが,ヘビに関してはハンドリングを続けることによって,生体が飼育者に慣れるというよりは飼育者のハンドリングが上達する事で生体が抵抗しなくなるといったイメージでしょうか.
例えば荒いヘビのハンドリングについても,生体をいかに安定させるかなど飼育者の技術に大きく左右されると思ってもらってよいかと思います.
あとは生体によっては持つまでが大変なものもいます.
いずれにしても,エサを食べない生体についてはメンテナンス以外は可能な限り触らないようにしてみましょう.
・生体の様子
生体の様子はいかがでしょうか?
□シェルターに引き籠っている
□ケージの隅で丸まっている
□ペットシーツの下に潜っている
□水容器に入ったまま出てこない
いずれも特に問題はないと思っていいです.
多くの生体は夜間以外はシェルターやペットシーツの裏,ケージの隅などで丸くなってジッとしています.
そして夜間にシェルターから出てきてエサを探してウロウロしていることが多いです.
割と夕方も多いかもしれませんね.
ですので夕方から夜間に掛けて生体をよく観察してみてください.
また,こちらに気づいて生体がどのような反応をするかもチェックしてみてください.
飼育者に気づくとすぐにシェルターに入る,固まるなどするかもしれませんがまだ少し怖がっている程度で特に問題はないです.
逆に夜間になっても全くシェルターから出てこない,頭部すら出さないような状態ですと,もしかするとケージの温度が低かったりなど飼育環境が合っていないこともありますのでもう一度チェックしてみてください.
3.アシスト給餌と強制給餌
エサを食べない生体に対して,試してみたい方法は多くあります.
ですが少ないながらも何をしても全く餌を食べようとしないものもいます.
そういった生体にはアシスト給餌か強制給餌を行わなければならない場面が少なからずあります.
私自身も今までに何匹かに行ってきましたが、何度やっても良い気はしません.
方法については文章ではわかりにくいので動画投稿サイトで確認されてみてください.
*ボールパイソンではありませんが一番わかりやすいと思います.
アシスト給餌にするか強制にするかは時と場合によりますが,咥えさせればそのまま「モグモグ」と呑んでいくものもいます.
ボールパイソンはこの傾向が強い印象で,あまり強制を掛けたことはないです.
(個人的な経験です)
慣れてくればそのままチェーン給餌でホッパーマウスを咥えさせても良いでしょう.
それでもどうしてもダメな場合は胃までしっかり扱いて送り込んであげましょう.
ただ,アシスト・強制給餌はともに非常に強いストレスを与えますので,可能な限り最後の手段にとっておくべきだと個人的には考えています.
最近の経験では病気のブラックヘッドパイソンにアシスト給餌をしていました.
喉を開けさせるまでが大変なので焦らずゆっくりグッと押し続けましょう.
無理に押し込むとピンクマウスが破裂して大変なことに…
4.購入前に気を付けること
この記事を読まれている方の多くはエサを食べないボールパイソンの対応に難渋されている方かと思いますのでこの項については
「そんな事はわかっているよ」
とお叱りを受けてしまいそうですが,購入前に気を付けることを再度チェックしておきましょう.
エサについては
□エサは食べているか?
□いつ食べたのか?
□何を食べているのか?
□与え方は?
生体の状態については
□いつ入荷したのか?
□CB個体か,FH個体か,WC個体か?
□糞・尿酸に問題はないか?
可能であればハンドリングさせてもらい生体の身体をしっかりチェックしましょう.
□痩せていないか?
□持った時に逃げようとするか?丸まるか?
□ダニは付いてないか?(目視でわかる範囲)
いずれもショップのスタッフと購入前に相談されることをおすすめ致します.
販売する側も真剣に生体と向き合おうとされている飼育者の方に売りたいという気持ちもあるでしょうから親身になって相談に乗ってくれると思います.
5.まとめ
いかがでしたでしょうか.
【ボールパイソンがエサを食べない時に試したいこと】
ヘビの飼育をする醍醐味の1つは給餌だと個人的には思っています.
せっかく満を持して飼育を開始した生体がエサを食べないと心配になってしまいあれこれと様々な事を試してしまいたくはなりますが,まずは飼育環境をしっかりと整え,時間を掛けてゆっくり食べてもらえるように促していきましょう.
無事にエサを食べてくれることを祈っています.
**生き物を飼育することの是非はここでは問いません.また,本記事は飼育を促進するためものではありません.
生き物を飼育することは命を預かることです.その生体を最後まで責任を持って飼育することが飼育者の義務です.飼えなくなったという理由で逃がしたりすることは絶対にやめましょう