【51Base】です.
【タマオヤモリの飼育・飼育環境】
昨今は爬虫類飼育者が徐々に増加傾向にあり,その人気を牽引している種は恐らく
「ヤモリ」
ではないでしょうか.
ヤモリと言えば多くの方が「二ホンヤモリ」をご想像されることかと思います.
ですが,世界には非常に魅力的で可愛いヤモリがたくさんいます.
今回はその中でも個人的は特に可愛いと感じている
【タマオヤモリ”属”】
についてまとめていきます.
*タマオヤモリは属名で多くの種が分類されています.今回はその中でも比較的流通のある「ナメハダタマオヤモリ」「オニタマオヤモリ」を中心にまとめています.
【内容】
1.タマオヤモリとは
■分類
■生息域
■大きさ・価格
2.飼育環境
■飼育ケージ
■温度・湿度
■シェルター
■床材
3.エサ
■昆虫
■人工餌
4.慣れる?ハンドリング
5.まとめ
目次
1.タマオヤモリとは
■分類
爬虫網有鱗目カワリオヤモリ科タマオヤモリ属
9種のタマオヤモリが確認されていますが,日本で主に流通する生体は
□オニタマオヤモリ
□ナメハダタマオヤモリ
□オビタマオヤモリ
地域個体による亜種もいますが概ね上記3種は市場でも見かけることがあるかと思います.
あと6種ほどいますが,個人的に見たことも飼育経験もないので正直なんとも言えません.
■生息域
オーストラリアの乾燥した砂漠・草原に生息しており,地中に穴を掘って生活しています.
中央から東西から南部かけて広く分布していますが,多くは中央の砂漠地帯に生息しています.
■大きさ・価格・寿命
平均全長:8-10cm
最大全長:16cm(オニタマオヤモリ)
平均寿命:7-10年
最大種はオニタマオヤモリでそのほかの種は概ね10cm前後です.
ただ本種は尾部が太く短いので比較的大きく見えますし,オニタマオヤモリは頭部も厳ついので迫力があります.
タマオヤモリ属はオーストラリアの固有種ですので,現地からの輸出は法律によって厳しく禁止されています.
そのため,現在流通している生体は全てCB個体で,以前に研究用などで海外に輸出された生体の子孫が少数流通するのみですので非常に高価です.
オニタマオヤモリは1匹20万円程,ナメハダタマオヤモリは1匹8-10万円程で取引されることが多いです.
(ショップなどによっても価格は前後します)
2.飼育環境
■飼育ケージ
大きいオニタマオヤモリでも16cm程ですので,飼育ケージも小さいものでも十分ですし,岩場をレイアウトしてあげると登ったりもしますが,基本的には地表棲ですので床面積を確保できればどのようなケージでも大丈夫だと思います.
単体で飼育する場合であれば45cmケージもあれば十分で,少し大きいサイズのプラケースなどでも良いです.
ただ,オーストラリアの中央部は非常に過酷な環境下にあり,気温が昼間は40℃近くまで上昇し,夜間は20℃を下回り,乾季の5-8月には10℃を下回ることも.
そんな過酷な環境を再現するさいに重要なポイントは温度勾配を付けることです.
小さなケージで30℃以上の温度をキープすればまず間違いなくケージ全体が30℃超えとなり簡単にオーバーヒートしてしまうリスクもあります.
ある程度の温度勾配を設けるためにも45cm程度のケージは欲しいのですが,飼育部屋自体を空調で管理できていればこの限りではないかと思います.
グラステラリウムでしたら高さのないケージがラインナップされていますので,第一選択となるのではないかと思います.
またレオパなどの小型のヤモリの飼育によく使用されるレプティケースなども非常に使い勝手も見た目にも良いのでおススメです.
多頭飼育の場合はワイドが発売されましたので,飼育者にとっては選択肢が増えてうれしいことかと思います.
■温度・湿度
オーストラリア中部は乾燥した草原から岩山,砂漠地帯が広がっており,本種は日中の暑い時間帯は岩の影や地面に穴を掘ってその中で過ごします.
日中は非常に気温は上がりますが,逆に夜間は熱帯雨林などと比較すると非常に気温は下がる傾向にあります.
特に乾季は温度が10℃程度まで下がります.
飼育下でもそのような温度管理をするかと言われれば,長期的に見ると有効かと思いますが(寿命や繁殖において),飼育開始して最初の冬やベビーの飼育に関しては年中加温しても良いかと思います.
スポット | 温度 |
ホットスポット | 31-32℃ |
ケージ内温度 | 28-30℃ |
ケージ内最低温度 | 26℃前後 |
夜間温度 | 26℃前後 |
湿度についてはそこまでデリケートに考える必要はありませんが,シェルター内は一定の湿度があった方が生体にとては良いといった意見が多く,そのように飼育している方も多いです.
実際に野生下でも穴を掘って日中はそこで休んでいるため,ある程度の湿度は保たれている状態と思われますので,陶器型のシェルターを用いるなどして一部分だけの湿度維持には努めるようにしましょう.
本種は水容器からよりもエサや朝露など水滴から水分を摂取することも多いので,水容器よりも霧吹きが重要となりますので,毎日もしくは2-3日に1回程度,朝に軽く霧吹きを行うようにしてください.
ただ水容器からしっかりと給水できているようであればこの限りではありません.
■シェルター
上記でも記載しましたが,ある程度の湿度を保つことが可能なシェルターは必ず用意してください.
本種に光源は不要で逆にストレスとなるといった意見もありますが,シェルターがないとまずストレスの原因となりますので,必ず「狭くて,暗い」隠れる場所を設けるようにしてください.
ナメハダタマオヤモリなどは良く穴も掘りますので,少し深めの床材などを入れてやると夢中で掘っています.
シェルター内の湿度を効率よく保つために陶器型のシェルターが都合が良いのでおススメです.
設置位置はホットスポット下ではなく必ず涼しい場所に設置してください.
■床材
何でも構いませんが,穴を掘る習性のあるものがいますので,出来ればサンド系の床材を用意してあげましょう.
またこういった砂材は誤飲をしやすいので給餌の際など特に注意するとともにある程度は誤飲しても大丈夫なものを用意してください.
ただあくまでもある程度ですのでイレウスのリスクも鑑みると病気の生体や産まれたてのベビーなどには控えた方が無難かもしれません.
キッチンペーパーやペットシーツを使用しても良いですが,本種は穴を掘る傾向が強いものも多いので,10㎝程度は入れてあげると良いです.
3.エサ
■昆虫食
本種は肉食性で,野生では他種多様な無脊椎動物や他の小さな爬虫類を捕食していることがわかっています.
飼育下で与える主なものとしては
・コオロギ
・デュビア
・レッドローチ
・ミールワーム
・ハニーワーム
などでしょうか.
小型のヤモリですのでデュビアはSサイズ~SMサイズ,コオロギであればヨーロッパイエコオロギの成体程度までは与えることは可能です.
クロコオロギはかなり顎の力が強いのであまり推奨できません.
ミールワームはリン:カルシウム比率に偏りがあり,カルシウムの吸収率が低いので主食としては常用できませんが,消化は良いのでレパートリーに入れても良いかと思います.
ただ,いずれの場合においてもダスティング・ガットローディングは必須ですので注意してください.
嗜好性が強いのはやはり「コオロギ」で「ミールワーム」などは動きにもよるのかあまり嗜好性が高いようには思えません…
頻度は幼体時は毎日~2日に1回,成体時も2日~3日に1回程度与えるようにしましょう.
本種はオーストラリアの中央部に生息するヤモリですので,乾季にはかなり過酷な環境下での生活を強いられています.
過剰に給餌することで容易に肥満と化し,短命となることが予測されますので,餌はしっかりと絞るようにしましょう.
■人工餌(人工飼料)
本種は肉食性のヤモリですので,ヤモリ専用の人工飼料によく餌付きます.
特にレオパ用の人工飼料にも餌付きますので終生人工飼料での飼育も可能と考えますが,私自身が人工飼料での終生飼育の経験がありませんのではっきりと確証を持っては言えません.
ただ,「コオロギなどを与える必要はもしかしたらあるかもしれない」といった心構えはあった方が良いと思います.
個人的には人工飼料は栄養価も高く,管理が楽で,割と嗜好性も良いので人工飼料に餌付く生体は今後も人気が出やすいとは考えています.
4.慣れる?ハンドリング
本種は臆病な生体が多く,飼い込みの生体であっても飼育環境が変化すると非常に神経質になるものもいます.
レプタイルズフィーバーでお迎えしました♪
— 島田晋輔 (@DaotianJinfu) July 13, 2022
デリーンタマオヤモリのEUCB♂
去年生まれでお迎え時の体重は8.31g。
エキゾチックサプライさんから。
背中のラインがキレイ!#タマオヤモリ#デリーンタマオヤモリ#デレアニ#Nephrurus#deleani#南オーストラリアのピンバ周辺に生息 pic.twitter.com/yPMh4GQWDf
例えばレオパでも飼育開始時はシェルターに閉じこもるものも少なくありませんので,飼育開始直後は一定の距離感が重要だと考えています.
飼育開始時はその可愛い姿を見ることは非常に稀になるかもしれません.
夜間にシェルターから出ていてもこちらに気づくとそそくさとシェルターに戻っていく.
エサもシェルターから一瞬だけ顔を出して飛びついてくるだけ.
四肢を伸ばして体を大きく見せるようにして威嚇…などなど
まずは環境に慣れてもらうことを第一条件とし,しばらくはそっとしておいてあげましょう.
具体的には暗く,静かな場所で無理にハンドリングなどはしないようにしましょう.
慣れてくるとそもそも小さい種ですのでハンドリングにも危険は伴いませんが,あまりベタベタは触れないかと…
爬虫類はあまり触れ合いを楽しむペットではないので
「見て楽しむ」
「見て癒される」
が大前提となると思った方が良いかと思っています.
5.まとめ
いかがでしたでしょうか.
【タマオヤモリの飼育・飼育環境】
昨今のヤモリ人気を牽引してきたレオパに続いてニシアフリカトカゲモドキの人気が急上昇中ですが,ヤモリは他にも非常に魅力的な種が多く存在します.
■ペットにおすすめのヤモリ5選
価格が安い時期もありましたが,現在はブリーダーからの輸入も減った??のか非常に高騰してしまいましたが,それでも可愛くも魅力的な種であることに変わりはないと思っています.
**生き物を飼育することの是非はここでは問いません.また,本記事は飼育を促進するためものではありません.
生き物を飼育することは命を預かることです.その生体を最後まで責任を持って飼育することが飼育者の義務です.飼えなくなったという理由で逃がしたりすることは絶対にやめましょう