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ペットにおすすめのリクガメと
日本に流通する種類について
爬虫類の飼育において常に一定の人気がある「カメ」.
その中でもリクガメについては無茶苦茶マニアで希少なリクガメを飼育されている方や,繁殖しているブリーダー,可愛いレイアウトで飼育されている方など幅広い層から人気を集めています.
リクガメの飼育方法については以前,ヘルマンリクガメとギリシャリクガメについてまとめています.
■リクガメの飼育・飼育環境
今回はそんなペットとしておすすめなリクガメや現在日本に流通している種類について,焦点をあててまとめていきたいと思います.
私たちが普段目にするリクガメは本当にごく一部で,世界では多くの種が絶滅危惧種として登録がされています.
【内容】
1.リクガメの種類
■日本で主に流通しているもの
2.ペットにおすすめは?
■チチュウカイリクガメ属
■アカアシガメ
■パンケーキガメ
3.必要な器具は?
■バスキングランプ
■紫外線灯
■水容器
■シェルター
■床材
4.まとめ
目次
1.リクガメの種類
■分類
爬虫網カメ目リクガメ上科リクガメ科
リクガメ科には以下の属種が確認されています.主に日本で流通している種を中心に挙げていきます.
□アルダブラゾウガメ属(Aldabracheys)
・アルダブラゾウガメ(Aldabra gigantea)
4つの亜種が存在するが,どれも保護の対象.リクガメの最大種であり,甲羅は平均で110cm,体重は250kgにも及ぶ.国内でも時折CBのベビーが流通するが非常に高価.
最近はSNSでも飼育をされている方もいらっしゃいますね.
□リクガメ属(Geochelone)
・ケヅメリクガメ(Geochelone sulcata)
・インドホシガメ(Geochelone elegans)
・ビルマホシガメ(Geochelone platynota)
参照:Wikipedia
甲羅の形態などからケヅメリクガメはCentrochelys属の1属1種とされているが,不明な点も多い.
インドホシガメとビルマホシガメについてはどちらも現地で厳重な保護をされており,ほとんど市場には出回りません.
以前はインドホシガメは割と安価に出回っていましたが,世界的な保護の対象となっており,今後もごくわずかなCB個体が出回る程度かと思われます.
インドホシガメは2019年8月に行われるCITES会議でⅠ類への昇格が提案されています.
また,ケヅメリクガメは大型のリクガメであるにも関わらず,非常に安価であったため,終生飼育が出来ない,不適切な飼育環境,投棄など不幸な生体が多く存在したこともまた事実でした.
□ナンベイリクガメ属(Chelonoidis)
・ピンタゾウガメ(Chelonoidis abingdoni)
・アカアシガメ(Chelonoidis carbonaria)
・キアシガメ(Chelonoidis denchiclata) etc
参照:Wikipedia
主に日本で流通することがある種としてはアカアシガメとキアシガメがいます.
アカアシガメは比較的生息数も多いようで20000-40000円程度で取引されています.多湿と乾燥に強いことから日本の環境にも適応しやすいと言われています.
ピンタゾウガメはガラパゴスゾウガメの亜種され,最後の1頭である「ロンサム・ジョージ」が2012年に死亡したことから絶滅種となりました.
□パンケーキカメ属(Malacochersus)
・パンケーキガメ(Malacochersus tomieri)
2019年8月スイスで行われるCITES会議でⅡ類からⅠ類への昇格の提案がされている本種.以前は15000円程で販売されていましたが,紛争地の食糧問題や,密輸による資金調達など多くの問題も抱えているようです.
見た目が非常に特徴的であり人気種でもあります.また,甲羅の模様も非常に美しく人気種であるので今後の動向がきになるところでもあります.
□チチュウカイリクガメ属(Testudo)
・ヘルマンリクガメ(Testudo hermanni)
・ギリシャリクガメ(Testudo gracea)
・ヨツユビリクガメ(Testudo horsfieidii) etc
■ヘルマンリクガメ・ギリシャリクガメの飼育
ヘルマンリクガメ・ギリシャリクガメはよく市場でも見かける種ですが,分類については生息域の重複などもあり混沌としているようです.ヘルマンリクガメはインドホシガメやパンケーキガメ属に近いともされています.価格は概ね8000~15000円程で,毎年小さなベビーが大量に市場に出回ります.
□ヒョウモンガメ属(Stigmochelys)
・ヒョウモンガメ(Stigmochelys pardalis)
参照:Wikipedia
本種のみで1属1種の構成.甲長が70cmほどまで成長する為,飼育は大掛かりな設備が必要ですが,日本でも時折流通しています.
70000~150000円程と幅がありますが,流通量が減ってきており今後も価格は高騰することが考えられます.ソマリアリクガメをよく見る気がします.
分類についてはヤブガメ属に属するといった説もあるようですが,現時点では1属1種の説が有力なようです.
□ヤブガメ属(Psammobates)
・テントヤブガメ(Psammobates tentorius) etc
3種が含まれていますが,いずれもアフリカ南部の固有種で,いずれの種も絶滅の危機に瀕しています.その中でもテントヤブガメについてはごく稀に流通しますが,非常に高価です.
実物は見たことがありません…
□マダガスカルヒルリクガメ属(Astrochelys)
・ホウシャガメ(Astrochelys radiata)
・ヘサキリクガメ(Astrochelys yniphora)
いずれもCITESⅠ類に登録されており,登録票がある生体がごく稀に流通することがあるが,100万円以上と非常に高価です.
以前にも不法な取引で摘発された例が日本でもありました.
□ゴファーガメ属(Gopherus)
・テキサスゴファーガメ(Gopherus berlandieri)
・アナホリゴファーガメ(Gopherus polyphemus)
・メキシコゴファーガメ(Gopherus flavomarginatus) etc
*写真は写真はアナホリゴファーガメ
いずれも現地では法的に保護の対象となっているため,海外で繁殖されたごく一部の生体が流通するのみでほとんどその姿を見ることはないかと思います.
アナホリやメキシコは穴を掘ってその中で生活し,乾季などは休眠をします.テキサスゴファーはそこまで穴に依存するわけではないようですが,生体そのものを見たことがないのでなんとも言えません.
□インドリクガメ属(indotestudo)
・エロンガータリクガメ(indotestudo elongata)
・セレベスリクガメ(indotestudo forsteni)
・トラバンコアリクガメ(indotestudo travancorica)
トラバンコアリクガメはインドの固有種であり,インドからの輸入はほとんどなく(というかほぼない)時折elongataが流通する程度.
□セオレガメ属(Kinixys)
・モリセオレガメ(Kinixys erosa)
・ベルセオレガメ(Kinixys belliana)
・ナタールセオレガメ(Kinixys natalensis)
・スピークセオレガメ(Kinixys spekii)
*画像はスピーク
アフリカ原産のリクガメ.日本へも野生個体が比較的安価で流通することがありますが,長期飼育は難しいようです.
現地では食用・薬用として捕獲されることもあるようで,他のリクガメもそうですが,アフリカでの内戦が激しさを増し,難民が増えると比較的捕獲しやすいリクガメは蛋白源として貴重な食料ですので一気に生息数が減るリスクがあります.
ナタールとスピークは混同されて販売されていた記憶がありますが,最近は入荷の話をあまり聞かなくなった気もします.
□ムツアシガメ属(Manouria)
・エミスムツアシガメ(Manouria emys)
・インプレッサムツアシガメ(Manouria impresa)
インドから中国南部,インドネシアなどの東南アジアに生息しており,エミスムツアシガメは最甲長が60cmにもなり,ユーラシア大陸では最大のリクガメと言われています.
あまり目立つリクガメではありませんが,時折入荷があり日本の夏など,高湿度な環境には適応しているので飼育は比較的容易とされています.
□ソリガメ属(Chersina)
・ソリガメ(Chersina angulata)
学名からアンギュラータリクガメと呼ばれることもあります.南アフリカ共和国の固有種で流通は時折CB個体が出回る程度で非常に稀です.
以上が本国でも流通が見られる種ですが,多くの種で法的な保護の対象となっており,絶滅危惧種も多く存在します.
比較的CB化が進み容易に飼育ができるものとしては
・ギリシャリクガメ
・ヘルマンリクガメ
・アカアシガメ
・ヨツユビリクガメ(ロシアリクガメ)
などと少数のリクガメたちかと思われます.
ムツアシガメなどは野生個体が入荷することが多かったと思います.
2.ペットにおすすめは?
リクガメはその形態的特徴から,限られた環境下でした生息することはできず,新たな天敵に対しては非常に無防備です.
また内戦などの影響により,私たち人間の貴重な蛋白源としても乱獲され続けており,内戦状態の地域や地政学的リスクの高い地域のリクガメは軒並み生息数を減らしています.
ペットとして飼育される場合はそういった背景も踏まえ,可能な限りCB化された生体を飼育されることをおすすめ致します.
■チチュウカイリクガメ属
なんといっても最もポピュラーなリクガメですし,爬虫類の専門店だけでなく総合ペットショップにもよく見かけるようになりました.
・ギリシャリクガメ
・ヘルマンリクガメ
・ヨツユビリクガメ(ロシアリクガメ)
などがこの分類に入りますが,概ね飼育方法は同様で構いません.
■リクガメの飼育・飼育方法
価格もイベントなどでは5000円程で販売されているものからアダルトなどで20000円程で販売されているものまで値幅は広いのですが,やはり可愛いベビーから飼育される方が多いようです.
CB化が進んでいる生体は人間への警戒心が少ないものが多く,人馴れしやすく餌付けも容易なことと,最大甲長も30-40cmほどで平均で35cm程度ですので,飼育ケージも既製品でもなんとか終生飼育ができますのでその点もおすすめしやすいポイントかと思います.
■アカアシガメ
恐らく多くの方が飼育しているリクガメは上記のチチュウカイリクガメ属に属する主に3種だと思いますが,それ以外にも飼育しやすい種はいます.
アカアシガメはナンベイリクガメ属の1種で前足の鱗に赤の斑点が入ることからこの名が付いており,甲長も30-35cm程度,最大では甲長50cmほどまで成長するようですが,概ね35cm程度で止まるようです.
また,本種は様々な環境に適応することができ,乾燥にも比較的強いことから日本の夏期・冬期ともに適応しやすいと言われています.
■爬虫類の暑さ対策
また低温にも強く10℃程度まで気温が低下しても大丈夫ですが,幼体時はリスクが高いので屋内飼育が理想です.
ただし,屋外飼育をする場合,日本の冬期は0℃まで下がることもよくありますので,11月~4月くらいまでは屋内飼育に切り替えましょう.
屋外飼育では日陰のエリアをしっかりと確保し,暑さで生体が弱らないようにしましょう.
また,カラスや猫などの捕食者にも十分注意が必要です.
また本種は浅い水に浸かることがよくありますのでそこの深くない水容器などを準備してあげると尚良いかと考えます.
アカアシガメは生息数も多く,時折WC個体も流通しますがどちらかと言えばCB個体の方が多い印象です.
価格も20000~40000と無茶苦茶高いわけではありませんので,比較的おすすめしやすいかと考えます.
■パンケーキガメ
パンケーキガメはアフリカのケニア南部やタンザニア北部の東アフリカの固有種です.
紛争地帯の食糧問題や密輸による資金調達などにより生息数が減少していることが懸念されていますが,危険地帯の為,調査が行えずにいたのが現状の様です.
2019.8にスイスで行われるCITES会議でⅠ類への昇格が提案されていますので,今後輸入など規制がかかってきますが,国内でのCB個体も多くはありませんが存在します.
飼育に関して言えば丈夫でおすすめしやすく,非常に高価というわけではないのであえて挙げてみました.
本種は特徴的な薄い甲羅をしており,その様相はまさにパンケーキ.
ケニア南部からタンザニア北部,ザンビア北部に生息しています.
本当に甲羅の模様は一種一種違うのところもまた魅力です.
甲長も最大でも20cm未満と小さく,広大な飼育スペースも必要ありません.
以前はWC生体が大量に輸入され,どちらかと言えば少し砂っぽくて汚い印象でしたが,実際には上記の通り非常に美しい模様をしています.
その特徴的な甲羅は野生下で岩の隙間などに入り腹甲を膨らますことによって自身の身体を固定し天敵から身を守っています.
エサについても植物食が中心でジューシーな葉野菜から少し乾燥したものまでなんでもよく食べます.
3.必要な器具は?
■バスキングランプ
リクガメも他の爬虫類と同様に変温動物ですので必ずホットスポットは必要です.
特に草食性のものはセルロースの分解に多大なエネルギーを必要としますのでしっかりと温まれる場所は1か所~2か所は用意しましょう.
リクガメの多くはサバナ気候から熱帯性気候と一部の中米のものを除けば,基本的には高温な環境に生息しているため,冬期などは必ず保温が必要です.
ベビーなどを小さなケージで飼育する場合でかつ上部を開放しない場合はW数の少ないものが良いです.
最近は紫外線も同時に照射するセルフバラスト水銀灯が主流になりつつあります.
ただしここ数年は非常に酷暑となっていますので,ケージのオーバーヒートには十分注意が必要です.
■爬虫類の暑さ対策
■紫外線灯
リクガメの飼育に紫外線の照射は必須です.
初夏~初秋まで屋外で飼育されている方もいらっしゃいますが,屋内のケージで飼育する場合は紫外線灯は用意するようにしましょう.
■爬虫類の紫外線について
特にカメの成長にUVBは必要不可欠で,四肢や甲羅の形成不全を起こしますので可能な限り使用するようにしましょう.
ビタミンD3に関してはサプリメントなどでも補填はできますが,UVAも含めて活性も上がりますのでバスキングランプと併用,もしくはセルフバラスト水銀灯を使用するようにしましょう.
ランプタイプはリクガメの飼育には紫外線量が少し少ないので,蛍光灯のものがおすすめです.
ZOOMED社とポゴナクラブの紫外線灯は昔からお世話になっています.
また,バスキングランプの項でも書きましたが,セルフバラスト水銀灯も紫外線を照射しますのでおすすめです.配線が1つにまとめられるところがまた良いですね.
■水容器
身体が浸かれるほどのものでなく,足元が浸かれる程度の浅い水容器は用意してあげましょう.
全ての種ではありませんが,多くの個体で非常によく水容器内に入っているところをみるかと思います.
また,シャワーを掛けてあげるのもいいでしょう.
とくに暑い夏場は水容器内で体温の上昇を抑えることもできますので,屋外飼育の際にも必ず用意してあげましょう.
なるべく浅いものを用意しますが,傾斜の緩やかなスロープを用意してあげてもいいです.
小型の生体は市販の水容器を使用することが多いですね.
■シェルター
シェルターも可能な限り用意してあげましょう.
屋外では必須ですし,ケージ内でも涼しい場所に一つは最低でもあった方が良いです.
生体にとって安心・安全と思えるシェルターはストレスの軽減にもなりますのでサイズに合ったものを用意しましょう.
パンケーキガメなどは大きめの流木の隙間などに入り込んだリすることもありますが,多くの生体ではあまり「キツキツ」なものよりは少し余裕をもったものの方がよいです.
多頭飼育をする場合は大きめのものを1つ用意するか2つ以上用意して生体に選ばせてあげる方が良いと思います.
■床材
ヤシガラ土,ウッドチップ,赤玉土,ペットシーツなど生体に応じて使用してください.
万能な床材としてはやはりヤシガラ土でしょうか.
ある程度の湿度も保てますし,糞や尿の臭いも軽減してくれます.
更には糞をした部分だけすくい取ってやればいいので日々のメンテナンスは楽かと思います.
ただし,月一くらいで総入れ替えが必要なのでその際は大変な労力が…
タイルや人工芝を敷く飼育者もいらっしゃいますね.
■モニターにおすすめの床材
リクガメではありませんが,床材については共通点もありますので,ぜひご一読ください.
4.まとめ
いかがでしたでしょうか.
ペットにおすすめのリクガメと
日本に流通する種類について
ペットとして爬虫類の人気が徐々に高まりつつありますが,その中でもリクガメはマニアから初めて飼育する方まで本当に幅広い方に愛されています.
ただ,その生息数は多くの生体で減少の一途を辿っています.
基本的に流通する多くの生体は人の下で繁殖されたCBのものが多いのですが,それでも貴重な命であることに変わりはありません.
リクガメの平均寿命は他の爬虫類より長く,3-40年もの長期に及ぶ飼育個体も存在します.
長い長い,非常に長い付き合いとなります.
ベビーなど非常に愛らしく思わず衝動買いしてしまいそうですが,最後まで飼育が可能か,飼育環境を整備できそうかなど,もう一度よく考えてからお迎えするようにしましょう.
**生き物を飼育することの是非はここでは問いません.また,本記事は飼育を促進するためものではありません.
生き物を飼育することは命を預かることです.その生体を最後まで責任を持って飼育することが飼育者の義務です.飼えなくなったという理由で逃がしたりすることは絶対にやめましょう